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間に病院設立の要望が高かったが,各町村の行政当局は財政難と運営の自信のなさから自治体病院の設立には消極的であった。

龍ヶ岳町では,現職町長の森氏が医療の欠乏から不慮の死を招いたこともあり,尻込みする他町の協力を得られないまま,単独で町立病院を設立することになった。それも町議会では賛成と反対が同数で,町長の専決処分というきわどい設立への歩みであった。

当時天草五橋はなく,船だけが唯一の交通手段であって,上天草島住民の健康を守るためには必要最小限の設備と技術の集積が必要であるとの認識のもとに,病院は70床,内科,外科,産婦人科の3科,職員40人で発足した。それでも規模が大きすぎるとの危惧の念は,上級官庁や住民から度々寄せられていた。

2. 運営方針

病院では診療と研究と教育の3本柱が必要であり,且つへき地の病院財政を健全に維持する為には,九州本土からの患者や医療技術者に対する吸引力も備えなければならない。この主旨のもとに,看護学校を併設すると共に,病院としての診療と研究の上目標を勤務医師の専門であった肺疾患,なかでも気管支喘息とした。この目標に向かって病院の全職員が努力することになった。

D:気管支喘息治療のための条件

1. 温暖な海洋性気候,国立公園に指定されている明媚な眺望,豊富で新鮮な海洋資源など,工夫によっては利用価値の高い環境であったこと。

2. 近代文明に派生する諸々のマイナス現象,即ち,産業,交通,騒音などの公害,世俗的なイベントや俗悪なTV番組など,物や情報を過疎地であることから遮断できること。

3. アレルギー学,心身医学,呼吸生理学に練達したスタッフと器材。全人的治療に不可欠なMSW,臨床心理士,生活指導員,保母などの多彩な職種の参入を求めることが、町立という小規模の設立主体ゆえに柔軟に対処できること。

4. 病院経営が財政的に順調でさえあれば,気管支喘息、治療に必要な施設,設備への投資は容易に行える筈である。小児気管支喘息の施設療法にとって理想的な温水プール,体育館,体験宿泊室,心理検査室,食堂,集会室などは数年のうちに整備されて行った。

やがて病院は200床の総合病院となり,平成3年に病院前の埋立地に移転新築し,喘息治療に必要な施設や器材は新規の更に充実したものとなった。

5. 小児気管支喘息の治療については,患児とその家族による自己管理が重要であり,患者教育がその鍵を握っている。そのうち集団的なもので定期的に実施したプログラムは表(1)の通りである。ぜんそく講演会は各地の医師会や熊本県教育委員会,親子ぜんそく教室は熊本市教育委員会と熊本市学校保健会,サマー・キャンプは環境庁と大牟田市保健所の依託を受けて行ったものである。

 

表(1) 自己管理支援システムのプログラム

(集団的定期的なもの)

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表(2) 親子喘息教室参加数

(熊本市学校保健会・熊本市教育委員会主催)

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