序文
へき地医療学術論文集(No.7)を発刊するにあたり
社団法人 全国自治体病院協議会会長 諸橋芳夫
当協議会においては,1992年以来,農山漁村・離島など医療に恵まれない地域において診療に従事されている医師を対象に,これらの地域の医療の体験に基づく研究発表,症例報告などを内容とする論文集を刊行している。本年度においても論文を募集したところ,14編が寄せられた。いずれの論文とも,へき地医療の体験に基づいた貴重なものであり,他のへき地等で勤務する医師の診療にも役立つ優れたものばかりであり,今回も全応募作品を掲載させて頂くことにした。
勿論,細分化されたそれぞれの限られた医療の分野における学術論文は,大学の医学部等から発表され,諸外国からもその成果は高く評価されているが,へき地医療等を中心とした分野における学術論文は極めて少ないのが現状である。
例えば,高齢社会の今日,住民や寝たきり患者等に深く接し,へき地の勤務医師に要求される往診・検診・在宅医療等地域性に富んだ研究・問題点・対応,また,離島の特性を生かしたへき地ならではの実践をふまえた治療,さらに,各地域・各習慣における医療・保健・福祉の連携の中で,地域包括医療体制を取り込んだ総合診療等は,ますます質の高いものが要求されてきている。
今回の内容もへき地医療の体験に基づく学術論文集ととてふさわしい立派な作品ばかりである。
へき地医療の体験に基づく学術論文の公募は今回が7回目であり,今回発行する論文集は,1998年度No.7とし,医療,特にへき地の勤務医師に要求される幅広い分野の診療体験の学術論文集として広く、へき地医療,地域医療に挺身されている医師の診療に役立つことを期待している。
なお,応募された14編については,自治医科大学学長 高久史麿先生を委員長とする選考委員会に審査をお願いし,最優秀作1編,優秀作2編,佳作7編を選んで頂いた。
応募された13人の先生,審査を担当された 高久史麿先生をはじめ5人の先生に厚くお礼を申し上げます。
最後に,この論文集の発刊にあたり御協力を頂いた厚生省健康政策局長,日本船舶振興会会長,その他御協力を頂いた方々に厚くお礼を申し上げます。