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<試用>補聴器の使用を始めた1〜2週は、良く聞こえる方の耳で試聴し、1日の装着時間が延長した3週日頃に左右耳を交互に使用して比較する。片耳で安定して装用できるようになってから両耳装用に移行すると、家族の負担が少なく幼児も落ち着いて使える。

その他に試用中に着目すべき点は、a)イヤモルドは嫌がらないか、b)補聴器を装用した耳はどちらか、c)ボリュームは管理したか、d)装用の前に故障のチェックをしたか、e)補聴器をつけてからどんな音に反応があるか、f)声の出し方に変化はあるか、g)困った点などについてであり、家族などの訴えに応じて改善を工夫する。

 

図3 乳幼児の補聴器適合手順

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表3 難聴の程度と最大出力音圧と音響利得の調整

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(4)両親教育:ガイダンス

補聴器の使用にあたっては、耳型の挿入や補聴器の装着を嫌がる側もあり、またハウリングなど色々な問題がみられる。装用段階を進めるには家族が補聴器の必要性を理解して根気よく装用させていく意思が必要になる。補聴器試用時の着目点や聞こえの反応についての専門家と個別に話し合い、適宜問題を解決していく姿勢が基本的に求められる。

また、難聴の診断を受けた後に、両親の心理的な負担は極めて高く、困惑または責任の重さから不安が高まり孤独感に進巡している状況が少なくない。個々の心理状態を受けとめ、発達や教育・リハビリテーションの展望について適切なオリエンテーションが必要である(表4)。同じ状況にある他の家族と共に、ガイダンスを受けることは障害の受け入れに積極的な意味がある。また、親子の日常的な養育の中で両親が主体的に難聴児の発達を援助していくことの重要性や、今後、解決すべき課題とその可能性について討議の時間を設け、両親の果たすべき役割について結論が導かれることが望まれる。

また、小児の人工内耳の適応例の家族に対して、補聴器適応の場合と同様に、難聴幼児の養育・療育に関する基本的な内容についての適切なオリエンテーションが必要である。またその後、残存する障害と必要な長期的なケアシステムを展望する視点が、両親の主体的な養育・療育の姿勢を支えることになる。

近年、我が国でも人工内耳の小児への適応について多数例の結果が検討・報告されており、移植手術には術前の適用評価と術後のリハビリテーションのシステムを用意することが前提とされている。聴覚利用が困難であると予測される重度の先天性難聴小児について、人工内耳の適用を考える場合には、とくに初期リハビリテーションからの経過観察が有用

 

 

 

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