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えるかどうか調べてそろえていきます。この50%スイープが人工内耳で音を開く際に重要であるといわれ、50%スイープの音量が、小さい、もしくは小さい〜丁度良い大きさ位で聞こえると、音が大きくてやかましいとはまず言われません。

<マップの作成と調整>

電流の流し方が決まり、スイープでT,Cレベルもそろったら、いよいよ人工内耳で初めて音を聞く瞬間、音入れです。使える電極をすべて使ったマップを作り、それで音を聞いてみます。実際に音を聞いてみることで、各チャンネルのT,Cレベルの設定が適切かどうかがわかります。大きい音(70dBくらい)を聞いて、耳が痛い等不快な感じを受けるときは、Cレベルの設定が高すぎるチャンネルがあります。逆に、話しかけられた声が小さく聞こえるとか、自分の声が聞き取りにくいと言った場合は、TレベルCレベルとも設定が低いと考えられます。また、音が響く、エコーがかかる等と言われる場合は、高い周波数が割り振られているチャンネルのCレベルを下げていくと、解消されることがあります。

さらに、声が全体に低く聞こえて不自然で不快であるとか、逆に高く聞こえて金属的な音質が強すぎると言うときには、低い場合はチャンネルの20、19、18あたりを、高い場合はチャンネルの1〜5あたりの電極を不使用にし、残りの電極の周波数の割り振りを変えると、聞こえが自然な感じに近づく事があります。ただ、使用するチャンネル数を減らす場合、ことばの弁別(聞き分け)の力が大きく落ちないか確認する必要があります。これらの調整は、患者さんとのやりとりの中で行いますが、院内の騒がしい場所に出かけたり、時には戸外に出て様々な音の聞こえを試すことも必要です。また人工内耳からの聞こえは、失聴前には体験した事のない質の音であったり、感覚であったりするようなので、ことばで適切に表現できるとは限りません。表現されることばにとらわれすぎず、音が入ったときの身体や表情の変化なども総合して、調整することが大切です。

以上のような調整が終わりマップが完成したら、そのマップを入れた人工内耳を装用して聴力検査を行います。この検査で、各周波数全てで45dB前後の聞こえが確認されたら、マップは適正に作成されていると考えます。聴力域値が上がっている場合(聴力検査で55dBより大きい値になっている場合)は、Tレベルを上げて再検し、適正な域値になれば、スイープして前後のチャンネルとバランスを取ります。Tレベルを上げても域値が思うように得らない場合は、Cレベルを上げると良いでしょう。但し、この聴力検査の結果は、一つの目安であり、装用時の心地よさといった使用感と必ずしも一致するものではありません。この場合も、患者さんの聞こえと相談しながら調整することが大切です。尚、聴力検査時の感度レベルは最適感度レベルとし、スイッチはNで測定します。

また、SPEAKの装用では、平均で6〜10チャンネルを同時に刺激するので、チャンネル1本づつの測定値で作ったマップがうるさすぎて使えない患者さんがあります。こういう患者さんや、各チャンネルの測定値に大きなばらつきがありかつ語音弁別の悪い場合には、T,Cレベル測定値を基に40〜45dBの音から聞こえ始め、70dBのワープルトーンが響いたり不快に聞こえないTPCレベルを、オージオメーターを使って調整するという方法もあります。いずれにせよ、音入れ直後からことばがはっきり聞き取れるということは稀ですが、電話で家族と話せたと言う人も中にはあって、他の患者さんからうらやましがられます。

<音入れ後のマッピング>

当科では、音入れも含め1週間おきに計3回のマッピングをしてから退院となり、退院後

 

 

 

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