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上げられて来ました。更に毎年補聴器研究会を開催し会員の補聴器に関する知識の向上に努めています。また日本耳鼻咽喉科学会(日耳鼻)でも早くから全国身体障害者福祉医療講習会、専門医講習会、などで補聴器を研修カリキュラムの一つとして毎回取上げています。更に補聴器適合判定医師研修会が厚生省、国立リハビリテーションセンター主催で毎年約1週間の日程で実技も含めた補聴器適合判定の研修を日耳鼻会員の希望者を対象に行っています。
最近では日耳鼻は各府県毎に中心となるkey person(キーパーソン)と複数の補聴器相談医を依嘱し、販売業者と一体となった補聴器供給システムを作って、難聴者のニーズに応じられる体制作りを進めていますが、地域隔差が大きく全国的には未だ軌道に乗っていません。日耳鼻会員は約1万人ですが、その専門領域は多岐にわたり、補聴器はその一部に過ぎないのです。補聴器について関心を持ち、研修に積極的に参加し、知識を持っている耳鼻科医は多いのですが、個人開業や病院でも耳鼻科医が1名しか勤務していない場合などでは、例外を除くと、患者さん1人に1〜2時間かけて補聴器相談や、まして適合、評価、アフターケアなど行う時間的余裕はなく、経済的にも設備投資に見合った保険点数も認められていないので、現段階では補聴器専門店を紹介するか、補聴器、難聴外来を開設している大きい医療機関やリハビリセンターなどがある都市では、そこへ紹介することもできますが、そのような施設に恵まれていない地域では患者さんの要望に応えられないのが現実です。
幸いに平成11年から国家資格を持つ「言語聴覚士」が誕生します。その人達の教育カリキュラムの中に難聴者のニーズに充分応えられるよう補聴器に関する知識と技能を身につけられるだけの内容と時間数を割り当ててもらうよう、患者さんを含めた関係者が要望を続けることが極めて重要です。その上で可能な所から始めて、できるだけ多くの病院の耳鼻科に「言語聴覚士」を雇用してもらうことにより、補聴器のことなら、どこでも最寄りの耳鼻科に行けば、比較的近い病院へ紹介してもらう可能性が大きくなる筈です。(今迄国家資格がなかったため、一般職としてしか雇用できぬため、有能な人の確保が国公立病院においてすら困難であり、私立病院では、国家資格がないため診療報酬点数が低いことも病院経営の立場から雇用を妨げる一要因となっていました)上のようになれば今迄どこへ行ったら、充分な補聴器相談や自分に過不足なく適合した補聴器を入手できるのかも分からず迷っていた難聴者の多くが救われ、そのような実績が積み重なり、「子供が熱を出せば小児科へ」というように「補聴器のことなら先ず最寄りの耳鼻科へ」ということが一般の人々の常識になれば、不適切な補聴器販売は成り立たず自然消滅する筈で、これが補聴器供給ルート改善の最終目標です。

以上で補聴器供給ルートとそれに関与している耳鼻科医と補聴器販売業界の難聴者の補聴器についてのニーズへの対応の現状について、大略のお話をしました。

 

3. 補聴器購入に際してのアドバイス

 

補聴器は医療器機で家電製品ではありません。購入する場合、どのように考えたり行動したりすることが必要か(自己責任)お話しします。

1)自分はどんな場合に補聴器の力を借りたいか、本当に使いたいと思っているのか、自分に問うことが出発点です。他から言われて気がすすまないが一寸試してみようというのでは購入しても殆ど使わずにタンスにしまい込む結果になる可能性が高くなります。

2)一口に耳が遠いといっても、検査してみると聞きとり能力はひとりひとり異なっています。(知人が、この補聴器はよく聞こえるといっても自分にはどうか分りません。)

3)聴力検査や補聴器の適合検査などをしないで一寸試し聞きだけしてもらって購入をすすめるような店では買わぬようにするのが賢明です。

 

 

 

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