「補聴器システムとリハビリテーション」冊子刊行に当たって
社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
理事長 高岡 正
今や、高齢者人口はわが国の人口の16.2%、2000万人を越えました。人は誰しも高齢になると聞こえが悪くなります。補聴器メーカーや耳鼻科医等によって、難聴者は約600万人、人口の5%と推計されています。しかし、わが国では平成8年度の厚生省の身体障害者実態調査によると、身体障害者としての聴覚障害者は35万人しかおりません。また補聴器は年間約45万台しか販売されておりません。
日本ではまだ聞こえないことが恥ずかしいという意識が強く、補聴器を装用することにためらったり、装用していることを隠してしまう傾向が強いことから、補聴器の普及が遅れています。このことは、多くの方が補聴器を装用されていればもっと快適な生活を送ることが出来ることを示しております。
(社)全難聴にとって、補聴器と補聴援助システム、人工内耳にスポットをあてた公開の場でのシンポジウムはこれが初めてです。
全難聴はこれまで、聞こえの保障を求めて一貫して取り組んでまいりました。前身の全国難聴者連絡会議の発足の時から集団補聴システムである磁気誘導ループの公的な場での設置を求め、また全国難聴者福祉大会の分科会や稀聴学フォーラム、人工内耳フォーラム、「人工内耳の実状と相談の会」の開催を通じて、補聴器と稀聴援助システム、人工内耳について私たち自身の研鑽を積み、また「補聴器ガイドブック」の発行をして社会の啓発活動に取り組んでまいりました。
このシンポジウムをきっかけに、全難聴の会員の補聴器と稀聴援助システム、人工内耳に関する意識がさらに高まり、今後各都道府県で補聴器に関する啓発講座がくまなく開かれるようになることを計画しております。
国民の間に難聴者と難聴問題に対する理解が広まることが、多くの難聴者の社会参加を促し、QOLを高めることになり、ひいては職場や家庭、地域の活性化につながることを確信しております。このためには、全難聴と耳鼻科医、オーディオロジスト、言語聴覚士、補聴器販売店、補聴器メーカー、補聴援助システムディーラー、ソーシャルワーカー、メディカルソーシャルワーカー、リハビリテーション技術者等専門家、関係機関との連携を発展させることが鍵です。幸い、全難聴と補聴器の先進国のアメリカの最大の難聴者団体SHHH、(全米難聴者協会)と昨年相互の全国大会の訪問によって、連携を図る機会が得られましたので、先進国に習いつつ消費者としての力を結集して参りたいと祈念しております。
シンポジウム開催にご支援を頂いた日本財団はじめ協賛頂いた各社、執筆にご協力頂いた各位に厚く御札を申し上げます。