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現行の規則は高速船構造基準(以下高速船と略記)、軽構造船暫定基準(暫定基準と略記)と軽構造船基準案の3種が公布されているが、最後の規程は現実には使用されていない。従って前二者を対象にすれば十分である。「高速船」は長さ50m以下、「暫定基準」は24m未満の高速船に適用される。前者の強度計算の基本は弾性計算であり、後者のそれは塑性計算を基本にしている。従って、許容応力は前者が低く、後者が高く取ってあるが、強度計算に使用する設計荷重もこれに対応しているから、結局は算定部材寸法に両者間で大きい相違があるわけではない。ここで両規則の対比を論じる積もりはないが、それぞれの規則が制定された当時の状況を反映したものと云える。強いて云えば、「高速船」の方が国際的には通用し易いと云えるであろう。

以下両規則を適用した場合のこの規格の使用例を示して解説する。すべての構造部材を取り上げる余裕はないので、 ここでは最も外力の厳しい、衝撃荷重を受ける船底外板のみを取り上げる。

 

2.1 高速船構造基準の例

「高速船」の板部材の厚さは、アルミニウム合金の場合

 

003-1.gif

 

Q =22.4

S =防撓材の心距(m)

P =設計荷重(kN/m)

σall=許容応力=0.73σr(N/mm2)

σr =耐力

耐力σrの値は当然使用アルミニウム合金板の値であるが、この規程では5083-O材を128N/mm2として基準にしているようである。

板厚tの算式は両端固定の帯板の曲げ応力σの算式

 

003-2.gif

 

となり、「高速船出の数字となる。曲げ応力のみを考えて弾性応力を算定すれば良いと云うわけである。従って、テーパ付き板部の場合テーパ部に最大応力が来るようにテーパ部の厚さと幅をきめて、テーパ各部での応力が許容応力を超えないようにすれば良いと云うわけである。この計算法は文献(2)を参照して戴ければよいが、 これでは膜力を考慮してあるから、計算は梢複雑となるので、簡単なプログラムを用意した。曲げのみの場合は解析的に解くことが出来る。板厚が厚くなれば膜力の影響は低下するから、「高速船」では膜力を省略したと見て良い。新しくテーパ付き板を設計する場合、曲げだけの場合の最適寸法比を基として数値計算により求めることを推奨する。

 

 

 

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