水俣は自然が非常の豊富だと。豊かな自然がある。でもこれは全国にある。きれいな滝も、棚田も、川も、海岸線も、どこにでもある。ところがそこから違いが出てくる、それな何なのかを考えていかないといけない。それは何かというとそれはそこに住んでいる人、あるいはそれに関わっている人、これにあるんではないか。そういう意味では水俣は恵まれているのかな。
吉井:まず吉本を高い評価をしていただいてありがとうございます。マチ作りは人作りから始まりますので、水俣市には幸い吉本にかぎらず杉本さん、そして手伝いいただいたたくさんの人材が育っております。これは40年間の水俣病問題の中で、世界に渡って、学者ジャーナリスト、チッソ、その影響があります。水俣市は小さいマチでありますけれども、価値観が大変多様化をいたしております。まとめるには大変ですけど、これは一つの大きな財産です。どう活かしていくかということであろう。
水俣の分別収集は21品目に分けるのがすごいのではありません。一番自慢したいのは、これをすべて、全世帯が市民が自ら手をよごして家庭で分別するということにある。これは環境意識が高くないとできない。環境問題を考える原点。
それから修学旅行の問題について大変貴重なご意見をちょうだいいたしました。資料館、語り部だけでは駄目じゃないか、私もそう思います。今水俣が準備しているのは、過去の出来事だけではなく、過去の悲惨な出来事は時間が経てば忘れ去られる。長崎の原爆の語り部がそれを証明しています。やはり過去と現在とそして将来が学べるところでないと、本当の学習基地とはいわれない。将来日本の、世界の環境問題がどうなっていくのかというのを、水俣でやりたいと思っている。最新の情報が水俣から発信される。国県を巻き込んでやっていきたい。修学旅行のなかに釣りや分別収集などの体験を入れたい。話し合い、語りの部分、市内の中学校あるいは高校、同年代の人と夜語り合うことができたらな、それをやりたい。市内の施設の案内も、全部ガイドさんじゃなくして、市民から募集した案内人、この人たちにボランティアでがんばっていただく。そういうことを含めて水俣でないとできない修学旅行、こういうのを考えていきたい。
多くの人が来ることの問題点が指摘されたが、来る人が地元の荷物になってはならない。地元の貧しい人がなけなしの金を出して、裕福な都会の人の楽しみだけを提供しては駄目だ。やはりバランスが、地元に経済的精神的な潤いがある。同時に来る人がしっかり楽しんでいただく。これからのエコツアーを考える場合もそれがないといけない。山のツアーで、私の息子が愛林館の手伝いをさせられるが、家の仕事ができなくなるし、実入りがあるというとないから大変困るわけです。それがないようにしなければ。
水俣の環境問題で私が一番心配しているのは、森をどうするかということであります。あれをやる人がいないわけです、経済的に成り立たない。放置されてる。森は放置されると大変な災害を起こします。自然の森はタネが落ちて発芽して森になるわけです。タネから作った森は、優劣ができて自然に淘汰をしていきますから、間隔も保っていきますし、森として成長する。今の森は、クローンですから、全部同じように育つ。そうしますと下の植裁が枯れてしまいますし。
環境に関わったマチ作りをして飯が食えるのか、一番問題。そのことを今でも一部の市民は「できるのか。むしろ疲弊の方向にいくのではないか」という心配があります。私たちが取り組んでいるのは、飯が食えるような環境と共生をさせたい。これは世界どこでも経験したことのない、まさに壮大な実験であると私は思っています。ここ数年やってまいりまして、できると、根底になる市民の環境意識がしっかりしてくるとできると思っている。