●意見交換(コーディネータ:加藤長光氏)
・会場参加者
農林水産省に40年ほど勤務していたものです。現在、所有する山林の所在がわからないような地主・山主が多くなってきている現状をどうお考えでしょうか。また、最近木材を使用する棟梁・大工が少なくなってきています。設計屋さんが責任を持ってこれから大工の人を育てていってほしいと思いますが、いかがでしょうか。
・加藤氏
林業の町として山があって木があるけれども、自分の山の所在がはっきりとわからないという問題ですね。行政との関わりの中で山の立地境界はニツ井町の場合、まだはっきりとしていませんね。山の境界をきちんとする計画は町ではあるのですか?私もその件について2〜3年前に役場の方に開いたのですが、そのうちにという返事を聞いただけで、まだそのままの感じのようです。
・鈴木氏
戦後の日本では木造を捨ててきたという経緯があります。昭和40年代で木造に関する講義が消えています。今かろうじて専門学校において大工を養成する課程があるぐらいです。4年制大学ではほとんどありません。にも関わらず、木造の住宅は着工の半分以上あります。しかも在来工法に近い形でですね。木造を捨ててきたんだけど大工・棟梁が支えてきてくれています。でも、もう限界なんだというのが先ほどのご質問の趣旨だと思います。
前を向いて話すと、木ネットに似た産直の仕組みができはじめています。それを活かそうということで、富山県の職芸学院、金沢の職人大学校など大工を養成する塾、職人学校も増え始めてきています。一流の棟梁に普通の大工が師事してもう一度学んでいます。地下水脈が少しずつ流れ始めている感じです。21世紀はその水脈が強くなる、強くならないと日本という国はありえないと思います。明日を信じて自分たちにできることに少しずつ参加することが大切です。なんと言っても施主が変われば世の中がかわるんですね。
・加藤氏
最近は、正直言いまして、どうも大工さんが職人ではなく、生産者側、あるいは物をつくればいいやという考え方になってきているように感じます。今の伝統的な技術は、あと10〜20年たてば全部技術が消えてしまうでしょう。ニツ井の町営住宅ではその技術が見えるような構造体にしています。それを今の、そして次の職人さんに伝えたいと思っています。木の見方、木の扱いかた、若い大工が60歳の大工さんの技術を聞いて盗んで、きちんとやれる大工さんがニツ井町に残ってもらいたいと思います。20〜30年後にニツ井町の大工の技術はすごいと言われ、大工も残って、他の地域より非常に仕事があるといわれるようにしたいものです。
・今井氏
繊維素材は風で乾くんですね。風というものを現代風にいうと通風換気といいます。これをまったく拒否したのが建設省の考え方で、高気密・高断熱であります。未だにこの考え方を捨てていません。
もう一つの問題は国の制度だと思います。最大の問題は建築基準法と消防法だと思います。これを抜本的に変えなくてはならないと思います。