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環境保全型里地づくり

連続セミナー6]

モンスーンアジアの里地と山地

 

講 師 : 今井俊博((有)ユーラシアクリエイティブジャパン)

開催日 : 11月6日(金)

場 所 : ゆうど

 

●モンスーンアジアの気候と文化

京大の故中尾佐助先生は「自然生態系というか風土から自分たちの暮らしを取り巻く文化って何だろう」と考え、研究していました。これは共生の思想で文化も捉えていこうという意識ではないかと思います。

タイ、中国、ラオス等の国境辺りにいるアカ族をはじめとする少数民族には、日本人との共通性がたくさんあります。カゴメカゴメという童歌に似たのもあります。お茶や絹やクルミ、イモ類、雑穀や稲作、味噌や納豆等の食べ物もあって発酵文化等共通性が見られます。

ここには原始的な家、むらの建設があり半分縄文的。新しく村を建設する時に、条件として水、建材用の森があるか、食糧確保ができるか等が挙げられます。その時、巨木にしめ縄を巻き、御神木とします。むらの入り口には鳥居を作り、島居の内側はこの世、外側はあの世、というコスモロジーを作っています。これが都市計画、まちづくりの原点ではないかと思います。共通点が多いところからアカ族も日本人もルーツは同じ。これらの文化を育んだフィールドがモンスーンなのではないでしょうか。

モンスーンとは夏期に東南アジアの気候をもたらす高温多雨多湿の黒潮照葉樹林文化的な日本文化の側面であり、簡単に言って私たちは宮崎県綾町前町長の郷田さん、熊本県水俣市環境課の吉本さんらと共にそのアジア共通のフィールドを確かめながら巡る旅の時を十数年来共有することになった訳です。

気候学的にもインドの西の方は下降気流が発生して乾操する。東南アジアは夏場上昇気流が発生、ヒマラヤの岩峰が熱源となって湿った空気は上空の季節風に乗って日本にも高温多湿をもたらす。だから、日本の住まいは風通しを考えて作るというのがエネルギーがかからずに、日本の暑い夏を過ごすのには一番。

近代の工業化、情報化が、自分たちの風土を抜きにしてアメリカのエアコンと言う工場の施設として生まれたものを是とする固定観念を受け入れてきた。本来はもっと共生の文化があったのではないでしょうか。

日本の文化は、狩猟採集、農耕、工業の3つの文明しかないのではないか、と梅原猛さんは言っています。現代はこの3つが重層化して存在している。

会場となっているゆうどは使い手とつくり手の出会いの場としてのショップ兼ギャラリー。メインになっているのはジャワ更紗。それは昔の人の布はどうしてこんなにきれいなんだろう、という所から始まったジョセフィーヌ・コマラさんというアンティークのコレクターがプロデュースしたもの。現代までのものは糸の太さが同じ。絹糸が細く長く、色の発色がよくて、色落ちしないと言うことばかりを追求してきた。15年程前にアジアの繊維の見本市を行ったとき、そんな均―なものが多くがっかりした。そんな今井俊博が求めたのが、この自然素材の持ち味を生かして仕事の良さを現代にリファインして更紗を作っていった人たち。7、8年前から展示即売に関わって染めや、文様の意味を理解した上で現代のものを作り続けている。

 

 

 

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