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●小国の事例

これは地域づくりの一つの方法で、他にももっとたくさんあります。地域づくりに決め手はない、からめ手はある、と思います。

小国の事例は中山間地域の事例であり、10年くらい前から議論していました。中山間地域の手法ではあるが、地方都市や、大学のある町、研究都市など、人の入れ替わりが定期的に行われるところにも当てはめて考えることができます。

小国町は大分県と熊本県の県境。福岡から車で1.5時間。高速道路が整備されているので交通アクセスがよく、外の人間が入りやすいところでもあります。

豊かな自然に憬れて、来る人が多いです。しかし、ずば抜けて豊かな自然という訳ではありません。それよりも小国の自然や町づくりに対するイメージが先行している部分があります。これは小国の情報発信の戦略でしょうか。

昭和58年に就任した宮崎町長は名物町長です。役場の管理職が集まった中で、「町長はどの人ですか?」と聞いたら知らない人は必ず当たらないような容貌をしています。

人をよく見ていて人間観察力がすばらしいです。小国シナリオを作り、悠木の里づくりを行なっています。ここの総合計画は、5つのポリシーと29アクションのシナリオから作られていて、住民にも、外から来る人にもわかりやすいものを作っています。

アクションの一つに、ここは個人の誘致にも目をむけています。小国を気に入ってくれる人、問題意識のある人等に対して寛容です。外部参入者として、いろんなタイプの人が入っています。また、移住後に彼らが地域に与える影響を考え、適当であるかのチェックをする機関が、地域住民によりつくられているところもあります。

これらが、私が調査対象にした理由です。

 

ここで一部の外部参入者の実体を紹介しましょう。(スライド、OHPによる説明)

OHPとスライドを使っての説明

Aさん:

木工家。小国に外部から一番初めに移住。役場の企画課が窓口になり、紹介してくれた空き家が気に入った。役場は「人の誘致」ということで参入者を探していた。そこで引っかかった。今はイギリスの家具職人を年に1回招いて木工スクールをしている。町も応援。Jターン。

Bさん:

Cさんのおじさん。Cさんは音楽館が使われていない時、そこでソバ屋をやっている。

リコーダーを演奏できるところを探していた。小国の音楽館の木造建築の音響が良かった。さらに地元の人とも波長が合った。現在は小国音楽祭の企画に関わっている。始めは企画に関わっているだけだったが自分のホールを作ってそのうち移住。

地元の人のタイプの人だった。土地の仲介は地元の人がやった。一番変わったのは、地元の人が音楽は聴くものから演奏するものだと考えるようになった。

Cさん:

福岡で水不足の時、水がもらえなかった経験をし(地域のつながりの弱さを感じ)、小国に来た。

いきなり来て住む人はいない。何回か通う内に住む、アトリエを決めることが多い。

役場の企画班は「何回も来てみてください。そして決めて下さい。」と言う。

Fさん:

由布院の方。小国出身。東京から由布院に来たが、観光客増加により俗化してしまった由布院が嫌になって小国に戻ってきた。小国の美術フェスティバルに呼ばれたところを町長は目をつけてた。大分と小国に家を2つ持っている。特殊な入り方。

 

 

 

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