大型小売店ルートでは市場を通さない取引が25〜50品あり、その取扱高は3億円程度でした。
産地直送ルートは調べませんでした。
農協ルートでは14品を扱い、取り扱い高は10億円程度、そのうち9品は要するに水俣の特産であるみかんとお茶、タマネギであり、取扱高の9割を占めていたこと。
農家での自家栽培ルートを調べたら65品作っていました。特徴は自分が食べているものだから、安心安全。でもタダで隣や親戚に配っていました。
それでタダで配らずに市を開いて売るようにしました。できるだけ加工して。最終的には、料理だということで「おふくろの店」を開くことになり、水俣湾埋立地で「たけんこ」という食堂が田舎の家庭料理を提供しています。
●祈り・「火のまつリ」
水俣病で犠牲になったすべてに対しての祈りを火に託して届けるとの考え方で「火のまつり」を平成4年から実施しています。水俣湾の水銀ヘドロを埋め立てて封じ込めてできた土地の下にはドラム缶3000本の中に開じ込められた魚たちがいます。何もしないままでは足を運ぶことができないとの話を患者から聞いたので「火」に着目して祈りのまつりを行ないました。
蝋燭を浮かべたもうそう竹2千本、たいまつ3千本が各地区のボランティアによって供えられ、竹人形が踊り、手づくりの竹楽器と太鼓が音を奏で、水俣病患者の杉本栄子さんが語りを行う感動的な行事に育ちました。
●中山間地での取り組み
水俣の源流域に久木野という集落があります。30年代に3,500人いたのに現在1,300人という激しい過疎に見舞われた所です。
ライフスタイルインタビュー方式で10グループ調べてみました。この調査では、やっていること、生活行動に人の意識や価値観が現れます。生活行動や意識を調べて地域づくりに反映してみようと思いやってみました。
11グループの特徴は、次の通りです。
1]「マチ憧れ派」中高校生女子。タレントの噂話をし、勉強するのはマチヘ出るため。
2]「とにかく出たい派」20代前半の女子。標準語を話し、相手探し、田舎の良さを知らないで生活している。
3]「マチ感覚派」30代の子育て期の女性。標準語、畳にジュウタン、ソファ。出てくるのは珈琲で、漬物は漬けられない。
4]「新大黒柱派」農家にお嫁入りした30代〜40代の女性。山も畑も田んぼ仕事もこなし家も切り回す。運転免許を持ち車も持っている。
5]「後が心配派」60〜70代の農家にお嫁入りした女性。苦労して育ててきた山や畑、田んぼ。でもその技が息子夫婦には伝わらず嫁さんは町できれいな漬物を買ってくる。後が心配だという。運転免許はなし。
6]「どうにかしたいけど派」20代〜30代の後継者たち(男性)。久木野地区の問題にはくわしいけれどどうしたらいいかわからないという。
7]「経営工夫派」40代〜50代の農家後継者。農林学校を出て、農業や林業経営を工夫してうまくやれた最後の世代。
8]「お勤め派」町に勤めている人たち。車を持ち、パチンコにも行き、家と墓を守っている長男。
9]「兼業派」農業林業と兼業して町に勤め、家と畑、田んぼと墓を守っている長男。
10]「年金派」お勤め派、兼業派が退職し、年金で暮らしている。あきらめの気持ち。親から言われて家屋敷、田畑、墓を守っている。
11]「1+1=0派」。「この村では1+1(結婚のこと)2ではなく町に出ていくから0になる」嫁さんの特徴は標準語を話し、出てくるのはコーヒーで遊ぶのは公園。新婚の時は町で、子どもができると子育ては町で、大きくなると幼稚園、学校は町で、そして就職も町で、もうこうなると動かないし戻らない。