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まとめ

 

今回の調査では、事後にアンケートをはじめ、各所で数回に渡る会議を持ち、成果と課題を整理した。総論を言えば、水俣には、すでにグリーンツーリズムの芽が確実に芽生えているが、地域としての位置づけや取り組みについては、組織、個人のあり方、受入れ主体のありようなどの課題を抱えている。今回の調査で、これらの課題や水俣の特長を浮きだたせることができたことは、水俣における環境保全型地域づくりへの一助となるであろう。

 

●今回の調査をふまえて

・水俣病の話はどう受け止められたか?

1日目が深すぎるという声が多かった。よくも悪くも「ターニングポイント」「衝撃的」という表現が多かった。ツーリズムと水俣には切り離せない水俣病についてをどのように結びつけるかが、ひとつの課題である。

 

・コースごとの課題

Cコースは、内容が濃い分だけ、参加者が自分の時間を持てなかった。逆に、Bコースはゆったりと午後からは何もない時間をもうけた。参加者は、思い思いに、土地と人とを楽しんだように見受けられる。グリーンツーリズムは、参加者が主体的に地域の人、土地、自然、歴史、社会に触れ、そのことを楽しむ時間が必要であろう。

 

●水俣でのグリーンツーリズムの可能性

・湯の鶴温泉でのグリーンツーリズムのための課題

特に、Dコースとして、水俣において従来型の観光地にあえてグリーンツーリズム的なプログラムを組むことで、可能性を検討した。調査の結果、従来型の観光地においても水俣の資源を活かすことで十分にグリーンツーリズムの主催が可能であり、なおかつ、それにより、環境保全型地域づくりが進むと考えられる。もちろん、そのためには、いくつかの課題がある。

現在のところ、湯の鶴温泉の関係者には、「自分が湯の鶴を楽しむ」という自信を持ち得ていない。

グリーンツーリズムは、地元で日常の暮らしを楽しんでいることへの自信づけ、きっかけづくりになる。そのために、営業的には大変でも、少人数で繰り返すことが大切。はじめのうちはついやり過ぎてしまうが、食事は普段たべてるものを少し多く作るような発想、「お客」「案内」「もてなし」ではなくほっておくような発想が必要である。食べ方、取り方、作り方、見わけ方、見つけ方などが主活文化であり、グリーンツーリズムの目的は地元の文化に触れることであろう。

里地の実践であり、水俣で具体的な展開がされている「あるもの探し」を自ら行ない、地元で食材を用意する、自分で調達、おばちゃんが教えて客が作る、川がにをとりに行く、基本は、地元の人が暮らしを楽しみよそから来た人と一緒に楽しむための準備作業が必要になる。

実際の展開のためには、選べるメニュー・研修・訓練・経験・ネットワーク作りを必要とする。

例えばメニューについて湯の鶴は湯治場だが、そこに泊まりながら農家や漁師の所へ行ってご飯を食べさせてもらう。そこで「ちょっと手伝わないか」と誘う。これもメニューとなりうるだろう。

グリーンツーリズムの手法を獲得するためのプログラムも、自己成熟、自己増殖プログラムにした方がよい。遠回りでも、3回くらい研修、訓練、実習を繰り返せば、資源が豊富で周辺に経験がある水俣ならば獲得が可能であろう。そのためにも、すでに水俣で行なわれている様々な取り組みとの連携をはかるべき。そして、無理な組織化ではなく、ゆるやかなネットワークを形成することが成功への道であろう。その過程で、例えば行政との関わりもはっきりしてくると考えられる。

 

 

 

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