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・組織と担人の役割

グリーンツーリズムの主体は組織か、人か?どこが窓口になるべきかが今後の課題。

例えばハワイでダイビングを体験するという場合、窓口を通してお金を払いインストラクターから指導を受ける。これが西表の民宿だと関係性がちょっと違ってくる。「ダイビンダをしたい」と言うと、民宿のおやじさんだかおばちゃんが「じゃ、ちょっと知り合いに電話かけてみるね」という具合に、個人を通して人と人がつながっていく。

組織、システムと人のネットワークの違いがそこにある。

 

・目的の確認

水俣のグリーンツーリズムは、交流、観光ではなく、本物のグリーンツーリズムであるべき。

新しい水俣、水俣病以外の水俣、環境だけじゃなく自然のある水俣をどれだけ発信できるかが水俣におけるグリーンツーリズムの本質であろう。

水俣にはすでにいくつかの拠点があり、独自に受け入れ、案内をしている。環境センター、相思社、愛林館、資料館、市役所、ガイア水俣、反農連、せっけん工場、はぐれ雲工房、個人(杉本栄子、谷、吉本、吉野、天野)。

また今後、湯の鶴、東部センター、清掃センター、もやい直しセンターがその役割をになう可能性を秘めている。さらに周辺にホームステイ、ファームステイの可能性もある。

問題は、誰が意志を持っているのか。補佐役はいるのか。どんなネットワークを作るのか。拠点リーダーはいるのか。どんな役割を担うのか。連絡調整、広報営業、受付窓口、実施主体をネットワークの中で形成していくことである。

 

・語り部がどこまで語れるか

水俣病を通して得てきた、自然と人と地域の関わり方を語れるのが語り部である。差別、生きること、山のもんと海のもん…これらのことを語れる語り部の数は少なく、年齢も高い。これからは語り部が語り部を育てることが必要かも知れない。また、語り部に限らず、生涯学習などを通して地域に、地域の語り手、案内者を養成する必要がある。

 

・修学旅行などの受入れ

200人、300人規模になると、グリーンツーリズム、環境教育が水俣において可能なのだろうか。そのためのプログラム、環境学習の手法も確立しなければならない。

特に、200人、300人来ても、少人数に分け、「束」として人を扱うのではなく、「個よとして扱うためのしくみ作りが不可欠であろう。また、一般に集団教育旅行は、詰め込んでいくのが従来型であるが、水俣においては「時間がごちそう」になるようなしくみとなるだろう。みんなが同じ事をするのではなく、選んだ人が、選んだことを体験するようなしくみが必要であろう。

 

・情報発信、交流機能

水俣には、観光だけでなく、自治体研修、大学生、院生、教員の研究なども多い。外国からも来る。また自由旅行者も来るであろう。その人達にも、水俣のグリーンツーリズムを体験して欲しい。そのためには、どのような自然、地域の生活、人、遊び、空間があるのかを受け手が知り、自ら選べるようなしくみが必要だろう。情報の収集、発信、そして、旅行者同士、地域の人同士が実際に情報交流できる場所、サロンのような場所が生み出されることが必要であろう。本ツアー後、様々な取り組みが各方面ではじまっており、調査の目的である水俣におけるグリーンツーリズムのあり方の模索はあらたな段階に入ったと言っても過言ではない。

 

 

 

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