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環境モデル都市づくり宣言(水俣市)

水俣市の歴史と風士は、私たち人間が自然とどう向き合い、共生していくべきかを問いかけています。古くから、人びとは水のほとりを中心に野や山さらに川や海の、豊かな恩恵に浴しながら、生活を営んできました。

しかしながら、近代工業都市化の過程での、生産第一主義の考え方から引き起こされた人の健康被害と環境破壊の大きさにおいて世界に類をみないといわれている水俣病の発生は、地域に深刻な影響を与え、人のみならず多くの生命を奪い、人びとの心を蝕み、地域社会の存立さえも危うくし、市民は36年余の永い間苦悩を重ねてきました。

水俣市は、この水俣病の経験を貴重な教訓として、自然の生態系に配慮した環境モデル都市づくりを目指すことを決意し、さらに、水俣病の教訓を広く世界に伝えていきたいと考えます。

わたしたち水俣市民は、二度と再び水俣病のような不幸な出来事を繰り返してはならないという強い使命感のもとに、次のことに努め、その成果を内外の人びとと共有していきたいと念願します。

 

1 水俣病の教訓を学び、後世に伝えていく。

2 水俣病被害者の救済と、市民の融和を図っていく。

3 循環する自然生態系の中の、人やその他多くの生物に配慮した産業活動への転換を促していく。

4 生命の基盤である海、山、川を大切に守り、次の世代に引き継いでいく。

5 文明社会のあり方を問い直し、有限な資源を大切に利用することを基調とする社会システムづくりを進めていく。

 

「環境・創造・みなまた'92」が開催された本年を、水俣市の新たな出発の年にするため、ここに宣言いたします。

平成4年11月14日 水俣市

 

 

 

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