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●「地元学」について

く講師:地元学協会事務局長吉本哲郎氏)

 

自然(山・川・海)と暮らしのかかわりを観察すると、1]使う 2]遊ぶ 3]ながめる の3つに分類される。現在の生活の中で山・川・海を使っているか、遊んでいるか、眺めているだろうか?

それぞれのパターンから地域資源のあり方を探ることが、資源ととて調査する場合に重要なポイントとなる。これは、「自然」「産業」「たのしみ」の3つの切り口に相当する。「産業」の視点からは無用なモノも「たのしみ」からの視点ではとても重要視されることもあるからである。偏った見方ではなく、広い視点から地域を見ることが大切である。自分たちの生活している地域の「自然=風土」と「暮らし」を把握することで、地域を知ることができる。例えば、「自然の末のゆくえ」と「暮らしの中のあるもの探し」をすることから、それぞれを知ることが可能となる。そして、調べたら、「つないだり、重ねたり、はいだり」して考える。すると、今まで見えなかった点が見えてくるようになる。

単なる調査や資料にしないためにも、調査の中で感得した事を具体的な行動に移していくことが重要である。「地元学」とは、それを多様な言葉でもって地元の人に気づいていただく事でもある。

外から来た人の役割は「びっくり」すること。それは、質問を発することでもある。その問いに答えていくことから、地元の人の「気づき」が始まれば良い。地元を良く「知る」という事は地元がより「好きになる」事に通じる。ここで注意しないといけないのが、外から来た人は地元の人の意識より先にでてはいけないこと。地元の人が自ら「気づく」事こそ大切。そして、地元の人が地元の事を自分たちの言葉で説明できるようになっていただきたい。

地元学では、地元のキーマンの存在がポイントとなる。地域づくりとかで単にお金をかけるのではなく、5人でも10人でも地元のキーマンとなる積極的に動く人が見つかれば良い。そして、外から来た人も含めお互いの違いを認めあい、話し合い、さらに深く調べ考え、何かをつくりだしていく過程が地元学でもある。

 

「本当に住んでいる地域や町を知っているんだろうか?」

「何も知らないで地域おこしや町おこしをやろうとしていないだろうか?」

この問いかけを、よくよく考えてみる必要がある。地元学を通じた地域調査から、今まで見えなかった事が徐々に見えてくるようになる。それを、生活づくり、地域づくりへと展開していくことが大切。環境や産業に対しても視点を置きつつ、「生活づくけどすなわち生活の充足を考えていく事が良い地域への変革のポイントとなる。

例えば、使い方(ソフト)を考えてから、上モノ(ハード)の作り方を検討する順序でなくてはならない。

今回の地域資源調査で行うことは、風土(自然)と暮らしの把握が中心。

まず、風土の点からは生活になくてはならない水から調べていく。これが、「水のゆくえ」。人だけでなく多くの生命基盤を育んでいる水がどこから来ているのか、それを自覚することから始まる。

暮らしの把握では、地域にあるものを改めて発見していくことである。

とにかくあるものに気づいたことをなんでも地図に記入したり、写真にとって地図に貼ったりして、わいわいと題を出し合って発見していく作業。これが、「あるもの探し」でくらしの確認となる。

ここでも専門学者ではなく生活者の視点で調べていくことが重要である。

 

 

 

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