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・ 3面張り要塞のような川を自然工法で復元した事例

・ 炭坑跡地を縦のエレベータとして活用した施設の事例

・ ガスタンクの跡地を、タンクの中に水を張ってダイビングクラブになった事例

・ 倉庫をレストランにした事例

 

3. オーストラリアのインディペンデント・パネル

(有害物高度処理施設を住民参加の形で形成)

オーストラリア(以後「豪」と略)連邦政府は、PCB高度処理施設をニューサウスウェルズ州のコロワという町に設置している。かつても同じ町につくろうと政府と行政が町議会と町役場で設置を決定していたが、これは住民の反発にあって完全に失敗していた。

豪連邦政府はこの失敗を明確に反省し、次のように総括した。「政府と行政だけで決定してきた。住民を参加させず、情報も流さず、ワインの町に対する風評被害の配慮もなかった。隣接するビクトリア川の住民も無視した。こういう政府の態度が住民の一斉反発を招いた」と。これは日本のような中央集権制度ではあり得ない態度であり、地方分権制度の政府のよさだろう。

そこで連邦政府は、金を出すが行政から完全に独立したインディペンデント・パネル(独立委員会)のメンバー4人を選定し、住民の見解を聞き、住民が立案する計画を中心に有害物質の処理政策はいかにあるべきかという論議を進めた。専門技術にわたる問題についてはインディペンデント・パネルが選定した専門家の技術評価委員会が評価をした。

これらを政府はインディペンデント・パネルに一切を任せた。この結果、この有害物質処理政策は住民自らが求める住民参加・情報公開システムによる最高の性能と運営システムを持つ施設の建設に成功している。これらの諸結果は施設づくりの成功物語ではない。政治と行政主導の運営から脱皮して、住民を土台に行政政治が協力する新しい民主主義の形成に成功した物語である。

 

 

 

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