日本財団 図書館


海外の先進事例

 

これまで、取り上げてきた活動は、湖沼・河川の水質浄化、産業廃棄物処理場問題に対するものであるが、これらは、日本のみならず、山間部・流域部に起こり得る問題として世界共通のものである。そこで、これらの問題について、先進的な取組を行っている、ドイツ及びオーストラリアの例を紹介する。

 

1. ドイツ、バイエルン州の湖沼浄化対策

アルプス山地に接して、その北側に広がるドイツ最大の州、バイエルン州にはおよそ20ほどの湖があり、ほとんどが同州でも有数の観光地となっている。そのなかでも主なものはキーム湖、シュタルンベルク湖、テーゲルン湖、アマー湖などである。これらはいずれも日本の多くの湖と同じように、1950年代の終わりから60年代にかけて富栄養化現象が進行し、一時は夏季の水泳が禁止されたが、いちはやく徹底した浄化対策をとることにより、まもなく水泳が可能となり、なかには貧栄養湖の状態に移行しているものさえある。

 

バイエルン州の湖沼浄化対策要因

1.浄化計画を立てる前に、いろんな分野の専門家を動員して、計画策定にとって重要と考えられる綿密な湖沼の実態調査を組織的に行っている。

2.調査結果に基づき、最大の効果が発揮できると予想される浄化技術を慎重に検討し、決定している。

3.事業費を低く抑え、それを効率的口集中的に使っている。

4.綿密な年次計画を立て、それを忠実に遂行している。

5.集水域人口の水洗化率は95%以上に達している。水洗化率が95%以下では、浄化施設の効果は、はっきりあらわれていないという。

6.汚水処理場においては、リンおよび窒素の処理(いわゆる三次処理)がなされている。

7.湖岸の大部分は自然の状態に保たれており、水浴のための砂浜ビーチが各所に見られるほか、ヨシ、イグサ、スイレンなどの水草帯が広範囲にわたって保護され、水質浄化と景観の向上に役立っている。

8.都市部に降った雨水を、露天式もしくは地下式の浄化槽に集めて、浄化してから川に流している。

9.終末処置場で処理された水を直接河川などに流さず、自然の浄化池に誘導し、そこで1〜2日間、水草帯のあいだを通すことにより、さらに浄化度を高めてから川に流しているところが何ヶ所か見られる。

10.湖でのモーターボートの使用は、救命艇など特殊な場合を除き、厳しく制限されている。

11.漁業にも厳しい制約が設け、給餌養魚は、完全に禁止されている。

12.湖周辺および上流の農家は、農薬と人工肥料の使用量に厳しい制限を受ける一方、自然農法による農業は、補助金制度などによって助成されている。

13.農薬や人工肥料、家畜の屎尿などが河川に流入するのを防ぐために、河川の両岸を自治体が買い取って公有地とする対策が広く取られている。

14.最後に、行政、市民、専門家のあいだには、情報や意見の交換の場が設けられており、住民の意見を浄化対策に反映させたり、相互の良好な協力関係が成立させようとする行政側の努力が払われている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION