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また研究委員の一人、立命館大学の深井純一教授(副会長)は深井ゼミの学生を阿智村に常駐させて、社会環境アセスメント委員会の評価項目に沿って処分場問題についての住民の長期聞き取り調査を行った。この聞き取り調査も社会環境アセスメント委員会の最終報告の一部として取り入れられることになっている。

長野県の事業計画や環境アセスメントなどに対する21項目の住民の不安や疑問を委員会で10項目にまとめて、この評価を行う作業が行われ、98年11月現在中間報告を作成し、12月に中間報告が出される。いま、阿智村一部で反対派を中心にして住民投票の声が起こっている。だが住民投票の前に議会や行政がどれほど住民参加と情報公開を実現し、住民の不安や疑問に徹底した情報を与えることができるのかが一つの勝負になるだろう。

 

もう一つ重要なことは、「天竜水系(諏訪、上伊那・下伊那)のなかの搬入を予想される企業や行政が、どれほど自らの生産と排出再生のシステムを、大量生産型から循環型への改革を進めることができるか?」という問題だ。つまりこの管理型処分場建設計画の問題は阿智村だけの問題ではない。天竜水系の循環型システムの問題であり、南信全体の循環システム形成(消費者・生産者・行政・政治)のすべてがかかわるべき問題なのである。

これらの報告書がどのように住民に判断されるだろうか? それは住民が決定する問題である。社会環境アセスメント委員会は、考えられるすべての力を振り絞って循環型社会への住民・企業・行政の共同決定システムのための住民参加の基礎をどのように実現するか、そのための情報をどの程度提供できるかがこれからの課題となる。

 

 

 

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