4. 島崎山林研修所の取り組み
島崎山林研修所は、元信州大学農学部教授島崎洋路氏の開設した山林研修施設である。
(昭和3毎、長野県駒ヶ根市生まれ。70歳、信州大学演習林長、専門は林業経営。)
平成6年、定年退官後、地元KOA株式会社が開催する森林塾で山づくりの指導を行ない、
現在、島崎山林研修所を主催し「山造り承ります」の看板を出し地元伊那の山造りを行っている。島崎洋路氏の理念は「楽しんで出仕事をしよう」である。
島崎氏の山林に関する基本的な考え方
木を育てるということは、植林してから早いもので30年、木によっては、80年や100年という時間がかかります。先祖代々長い時間をかけて育ててきた山も、今、輸入木材の価格に押されて、伐採しても採算にあわないから放置してあるそんな状況です。採算が合わないというのは、伐採と運搬の作業賃に輸送費をあわせると、輸入材価格より高くなってしまうということです。輸入材に対抗できる価格で売ると賃金がでない。出ても他の産業に比べたら安い、安いから人がいなくなり、山が元気をなくしていく。林業経済という側面だけでとらえていくと、森林組合でも営林署でも採算にあわない山は手を出せないという状況でしようか。
もうすこし市民よりのところから見ていきますと、日本の森林のおよそ半分は私有林(民有林)で、それも、5ヘクタール以下の小規模な山林所有者が90%以上と圧倒的に多いんです。小規模な森林所有者は、ここ20〜30年間、山の手入れをしていない山もちが多い。手入れしない結果として、光の入らない痩せた林、枯れた木、腐った木の混じりあった荒廃した林になってしまう。光が入らないことで、森の中の微生物も減少し、森が活性化せず、山の恵みも少なくなる。荒廃すれば、より採算にあわないから、さらに手入れしない。かといって、山林は売っても1ヘクタールあたり、100万円くらいにしかならないから売らない。出もちではなく、土地もちになってしまった。山を開放してやらないと、山はいっそう荒れ果てるばかりだ。
山林研修所の開設趣旨
大学で指導していた当時から退官したら、できれば60歳くらいから、山造りをしようと決めていました。山の現場から、どんどん人がいなくなり山が荒れていってしまう。でもね、1ヘクタールの山なら、年に、3日から4日作業すれば、山はきれいになる。放っておくと、10年なら10年分の作業(30日から40日分)をしなければ、きれいにならない。毎年、楽しみとしてやってもらえれば、山は見違えるほど良くなる。手入れされた山の中には素晴らしいことが沢山ある。やればできるのに、やらないだけなんですよ。こんな思いから、研修所をつくったんです。森林所有者や山に興味のある人と、山造りを楽しんでやる。山造りをしながら、技術や山の素晴らしさを知ってもらいたいんです。
KOA森林型の研修項目
年に15回、林学科の3年間の実習で学ぶことはすべて体験してもらう。楽しんで作業を行なっているから、どんどん習得していきますね。また、出身地に帰って、身近な里山づくりをしながら、電話で指導したり、森林塾以外の日に、どうしてもわからないといって来て勉強してますね。一緒に、山造りするような人は、山造りの楽しさをわかっているから、とても習得が早いですね。