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諏訪地方の観光業は、諏訪湖周辺の温泉旅館街と、八ヶ岳山麓のスキー場やゴルフ場を中心とする高原観光地の2地域に分けられ、このうち、特に諏訪市内および高原観光地の汚水処理状況は、下水道施設の不備などのために、まだまだ大きな課題を抱えている。

農業は耕地面積の約90%が水田および畑であり、とりわけ八ヶ岳山麓には多施肥型の疎案を生産する広大な畑地が広がっている。

このほか、下水道や合併浄化槽などに接続されていない家庭用雑排水が、諏訪湖汚濁のもう一つの大きな原因である。

諏訪湖流域下水道の供用が開始された1979年以来、圏域内の公共下水道の普及率は徐々に向上し、平成7年度末で76.7%、水洗化率70.1%という、全国的に見てもかなり高い水準に達している。行政区域内人口のほぼ30%が、依然として排水をじかに諏訪湖に流しつづけていることになる。湖周辺の自治体のなかで、下諏訪町の下水道普及率および水洗化率はそれぞれ99.5%、98.9%ときわめて高く、諏訪市のそれは70.3%、64.3%ときわめて低いことが問題である。

 

「諏訪環境まちづくり懇談会」の発足

平成元年、諏訪地方に「諏訪環境まちづくり懇談会」が設立され、地元の名士であった旅館「布半」社長の藤原正男氏を引き継ぎ、飯田実氏は現在2代目の会長をしている。「まち懇」は一貫して、「泳げる諏訪湖」を合い言葉に、湖と河川の浄化、湖岸の再白然化を訴え、さらに山地自然環境の保全、市内の歩道の整備、町並み景観の向上、伝統的建造物の保存などを具体的に提案し、市民の立場でできるだけのことをやりながら、関係行政機関とも粘り強く話し合いをつづけてきた。その成果は徐々にあらわれてきている。

この「まち懇」での専門的な研究は、以下の部会を設け検討した内容を全体討議する形式をもちいている。この部会には、諏訪湖・水辺グループ、観光・リクレーショングループ、道路・交通グループ、商店街グループ、歴史・生活空間グループに分かれている。

 

「まち懇」は、平成元年以来、県や広域市町村、市民に対して、毎年2回の通信を発行し、周辺8市町村役場及び、土木事務所、商工会議所、他に、直接・間接の市民政策提言活動を続けている。これからの「まち懇」の活動は、

・ 公共下水道の普及率と水洗化率の徹底

・ 汚水処理技術、終末処理場、三次処理が可能な高度処理施設の建設(完成済)と徹底運用

・ 「再自然化計画」、昭和30年代以前の自然な状態に回復されること

 

そしてこのことを達成できるかは、

・ さまざまな技術の運用するにあたっての「徹底性の有無」

・ 「徹底性の違い」が、現代日本文化の本質に関わる大きな問題であること。

たとえば、行きすぎた経済優先思想、法制上の不備、全体的体系的思想の欠落、役所の縦割り行政や形式主義、自然観の退廃、住民の生活意識や愛郷心の低下、環境教育の立ち遅れ、などといったものが直ちに思い浮かぶ。この徹底性の追求度合が、「泳げる諏訪湖」「流域の循環型社会」づくりの尺度になりそうだ。このことは、天竜川のみならず、全国同じ課題であろう。

 

 

 

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