調査内容
長野地域における取組の現状
1. 諏訪環境まちづくり懇談会の取り組み
「諏訪環境まちづくり懇談会」(以下「まち懇」と略します)は、諏訪湖の水質を泳げるまでに回復することで、環境と観光経済の回復を主な目的とする団体である。自然と人間の共生をテーマに、H・D・ソローの翻訳-「森の生活」の著者であり、「まち懇」の会長である飯田実信州大学教授の指導で、ドイツの水賀汚濁からエコロジカル・ブランニングによる環境回復の実際を、ドイツ連邦共和国バイエルン州やノルトラインウエストファーレン州などとの3次にわたる交流で学び、その学習の成果を、諏訪湖および周辺自治体への提言を通して、着実に実践し成果を上げている。
この間の活動経緯は、
88年、バイエルン州から湖岸河川専門家を諏訪に招き、「第1回日独環境まちづくりセミナー」を開催
89年、「諏訪環境まちづくり懇談会」発足
90年、同会メンバーはドイツの湖岸都市を訪問調査
91年、「第2回日独環境まちづくりセミナー」を開催
93年、「第3回日独環境まちづくりセミナー」を開催
この間、バイエルン州のガルミッシュパルテンキルヘン市など各市でエコロジカル・プランニングの交流を行い、その学習を諏訪湖周辺で具体化し、諏訪湖と周辺浄化のための数次にわたる提言と共同行動に結実している。
97年、「自治大臣賞」「水環境賞」(環境庁)を受賞
この結果は諏訪湖の渚づくり、エゴ(入江)づくり、アシや水生植物の再生、下水道普及率の向上、下水高度処理施設の建設、定期周遊バスの運行などで実現している。これらの行動は住民運動としての行動だが、決して抵抗運動ではなく、提言し、共同決定をし、共同行動を行う主体的・創造的運動であることが特徴的である。
諏訪湖汚濁の原因
30年以上前から、5月半ばを過ぎるころから10月ごろまで半年近く、諏訪湖には「アオコ」と呼ばれる植物プランクトン(ミクロキスティス)が発生し、湖水が緑色に染まるようになった。6月に入ると、湖岸一帯はどろどろしたアオコにおおわれ、あたりは悪臭が立ちこめるようになった。 諏訪湖は霞ヶ関、印旛沼、手賀沼などとともに、日本で最も汚濁の進んだ、典型的な富栄養湖の一つ。これまで長野県や周辺自治体による下水道の建設、諏訪湖の周辺住民によるさまざまな浄化運動などが長年にわたって展開されてきたが、いまに至るも、それほどはかばかしい成果はあげていない。
諏訪湖の水質に悪影響を与えている要因は1)産業系、2)農業系、3)生活系。
諏訪地方は長野県下でも有数の工業集積地にあって、特に電機、精密機械、機械、食品関係の工業が盛んである。関連工場から排出される汚水は、排出基準の改定や技術の向上によって、ひところよりもかなり改善されつつあるが、なお不十分な面も少なくない。