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「森に生きる1本の木のことを考えて、これからは住まいの設計をしていこうと思った」

「杉の住まいの温もりがこんなにも爽やかで、暖かいものだということを知った」

「昔、材木は、買ってきては軒下に貯めてをいて、じっくり乾燥させて家を建てたものだ」

「今の住まいは、釘をたくさん使うが、木よりも釘のほうが早く錆びてしまう。20年くらいでがたがきてしまうのは建て方にもある」

「住まいは大工だけでなく基礎、左官、設備…と多くの人々が関わる。自然素材を生かして住まいを建てるためには、この人々すべての経験が必要となり時間がかかる」etc

秋田県二ツ井町では、戦後に拡大造林した杉の大出荷期が目前に迫っている。外材の価格競争に対して、秋田杉の真の価値を訴えるためには、本来の秋田杉の活用のされかた、すなわち、国産材のなかでも強く堅く、暖かみのある材としての特徴を引き出すことが不可欠だ。このためには、秋田杉の本来の特徴を引き出す自然乾燥を行なうことにより、高級材としての、自然乾燥を行なった材木を供給することが理想的である。

外材価格に対する国産材の価格、国産材の中での秋田杉の価格、この価格競争の中で充分な収益が取れないがために、国内林業が窮地に立たされている。

二ツ井町にあるモクネット事業連合では、10年前から、東京、埼玉、神奈川を始めとする都市住民、生活クラブ生協との共同で住まいの設計、建築をおこなってきている。市民団体の「大地を守る会」では、平成8年「自然住宅」の事業部を設け事業を開始した。「らでぃっしゅぼ―や」でも平成9年にサスティナブル・ディベロップメント・ソサイエティーグループを立ち上げ、住宅相談や設計、建築を行なう計画を検討し始めた。近畿圏では、名近生協、神戸灘生協も住宅事業への参入を計画している。宮城生協も同様の動きがある。

また、大手住宅メーカーを始めとする住宅業界においても、一気に自然住宅に関する事業展開を検討し始めている。あわせて、マスコミも日々注目度を高めてきている。

アトピーやアレルギー、花粉症やジンマシンなど、現代人のほとんどが何らかの化学物質過敏症にかかっている昨今、家庭内農薬や化学物質のない住まいに暮らしたいと考える人が、多くなってきている。従来型の高気密高断熱、化学物質依存型の住宅と異なる住まいのあり方の提案が望まれている。自然住宅、エコハウス、環境共生型住宅、様々なコンセプトの住まいが提案されている。

「秋田杉」(「青森ヒバ」)「二ツ井町」「白神山地」「秋田杉学術参若林」「自然住宅」をキーワードとする地場型基盤産業を興していくべき時は熱したと思う。

 

事業推進に関するリスクを最小化しながら、確固たる基盤事業を構築するためには、営業の要らない販売のための仕組みづくりが必要。その一つが、材木の注文乾燥制度と代金の前受制であり、このシステムの中に、様々な付加価値を設ける。

 

乾燥期間中に以下の相談や体験学習を準備する。

・ 秋田杉を使った住まいの基本設計相談

・ 秋田杉を使った住まいの実施設計を行なう工務店と設計士の紹介

・ 秋田杉を始めとする人工林と白神山地の森の案内

・ 秋田杉の俄採後の植林活動

 

二ツ井町では、住まいの建築に必要な「秋田杉」や「青森ヒバ」等の乾燥の注文を受け、その注文に応じて、乾燥施設の規模を決定する。乾燥施設に隣接して、伝統家屋や軸組み工法を学ぶ大工の養成学校、土壁や紙クロスの技能、自然素材の活用技能を学ぶ職業訓練学校の設置も検討が必要。また、1棟の建物の建設に必要なその他の素材に関するネットワークが必要。

 

 

 

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