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地域概要

 

秋田県二ツ井町は、県の北部に位置している。

二ツ井町の面積の78%の1万3720haが林野で民有林50%、国有林が50%であり、恵まれた森林資源を生かし、古くから林材業の盛んな地域である。製材製品出荷量4万900立方メートルの92%が建築用で、その90%が町外に出荷されている。町の工業生産高のうち、木材関係が37%で第一位となっており、重要な地場産業となっている。有名な秋田杉生産地でもあり、平成8年には、能代営林署管内国有林に生育する高さ58mの天然秋田杉が、「天然スギとしては日本一の高さであると考えられる」と林野庁秋田営林局によって発表されており豊かな自然が残されている。

(注:今回日本一とされた天然スギは、営林局が設定している「仁鮒水沢天然スギ植物群落保護林」の中にある。この保護林は広さ約18ha、平均樹高約50mの天然スギ約2800本が群生している林で、代表的な天然スギ林として、一般開放されている。日本一高い天然スギの直径は164cmで、樹齢は約250年と推定されている)

 

町の中央を流れる米代川を挟むように「県立自然公園きみまち坂」と「原生林の七座山」があり、自然景観を楽しみながら、蛇行する米代川の船下りも楽しむことができる。

最近では「県立自然公園きみまち阪」の由来から、きみまち恋文全国コンテストを行い、恋文の町としても有名。七座山は藩政時代から伐採が禁じられてきたため、原始の状態が保たれており、巨木と巨岩が折り重なる野生の森でもある。また、七座山のふもとには、営林署の宿泊施設として利用されてきた天神荘(近代化遺産)も古き時代のたたずまいを残して今に至っている。

 

二ツ井町には、秋田杉の学術参考林(樹齢250年〜300年)があり、周辺の山には現在もなお100年を超える杉や天杉(樹齢200年以上のスギ)も残っている。秋田杉は、寒冷地に生育することで成長は遅いものの、結果として年輪が緻密になり強固な建築材としての評価は非常に高い。しかしながら、外材の輸入と工場加工の容易さを考えると、20年しかもたない樹木でも、加工しやすく安価であることが、建築関連企業活動の中で追求され、従来、大工の持って加工技術や技、木の使い方などは考慮されなくなった。木を生かして地域の自然環境と調和した家を建てることは、もはや過去のこととなってしまった。自然環境への調和は、室内環境の電化により、冷暖房や湿度コントロールにより行うようになり、方位や風の通り道、木への気づかいもなくなってしまった。

また、国産材はコストと加工の容易さのみで外材と比較され、国産材需要は全体の20%のまま推移している。森林組合が活動しても、伐採作業の労賃は20万円を維持するのがやっとのところである。森林を育てることへの経済的な見返りが得られない中、二ツ井町においても、森に背を向けて生活をせざるを得ない状況に陥っている。このような中、既存の製材所が閉鎖されていっている一方で、企業活動とは馴染みにくいが、東京近郊の生協との連携のもと10余年前から、木造軸組み工法で、天然素材を活用した家づくりを行う「モクネット事業連合 加藤長光代表」のような新しい活動も見られる。モクネットでは、年間10棟前後の家を、秋田青森の木を活用した住宅を事業連合を組み新築し、地域の国産材の良さを積極的にアピールしている。

このような動きが大きく広がる仕組みづくりができれば、国産材の本来の風土にあった木の使われ方が、復元でき、かつ、環境と共生した本来の家が、普及していく事につながる。

森の機能、森と人との関わり、森と林業、日本の環境に適した住まいと国産材、経済林について現場の中で体験し学び考えることが、日本の中で里地の保全活動に生かされていくものと考える。

きびしい環境の中、新たなる模索と胎動を始めている二ツ井町における活動概要を報告したい。

 

参照:秋田調査資料1]

参照:秋田調査資料2]

 

 

 

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