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総括

 

住民が主体となった地域づくりを進めるために、各地で様々な方法が実践されてきている。今回は、その一つとして、住民自身の手で地域整備計画を策定している北海道標茶町の例を取り上げて調査を行った。この他にも、コミュニティープラン、地域振興計画、集落計画、地区計画、地域環境協定、自治公民館活動など様々な場を活用して、住民主導型、住民参加型の地域づくりを行っている地域が日本の中にはある。その例として、熊本県小国町、宮崎県諸塚村、北海道標茶町、鳥取県智頭町で実践されている方法を紹介する。

 

○熊本県小国町

熊本県小国町は、故北里柴二郎博士の意志を受けて「交流と学習」を理念とした集落単位、地域ぐるみでの交流と学習を推進し、「人づくり」「女性を前面に出す」「人の誘致に努める」「起業を助ける」(企業誘致はせず人が事業を興すという考え方)「コミュニティー計画を作る」というような基本的な考えにより独自の自立した文化を創造している点に特徴がある。

この特殊性を過去の歴史から見ていくと、戦前の自治のあり方は、旧村や集落での自治が基本であったが、集落自治という点で、日本の地域自治のあり方を大きく転換させたのは、戦後体制(進駐軍による旧来の自治の徹底解体のための施策)による社会教育制度と自治制度の変革だった。

「公民館制度」(社会教育は全て公民館を通じて行うべしという内容の通達)によって、「社会教育の仕組」は、全国津津浦浦一律の施策へと大きく転換した。しかしながら、唯一、この公民館制度を引かず、戦前の自治制度を継続した町がある。それが熊本県小国町であり、その小国町の自治方式とは、北里博士の理念とした「学習と交流」にある。

当時の熊本県小国町長であった河津氏(現宮崎町長の叔父)の施策により、公民館制度を引かず、小さな国としての自覚の上に行ってきたのが、小さな国造りであり、人づくりである。つまり戦前よリ一貫した地域づくりが行われ、民意の高い自治がなされている。

ここには、北里柴二郎、河津町長、宮崎町長と引き継がれる卓越したリーダー(オルガナイザー)による地域づくりの実践が顧みられる。小国町には、もう一つ「とっぱす精神」というものがある。交流を拒んだとすれば、山間の小さな国、鎖国をしたような状況に陥る地形であることから、古くから、新しもの好き、好奇心旺盛なのが、小国町民の気質であった。この気質と、リーダーによるオルガナイズによって、小国町は、集落の風土を大切にした地域づくり、地域内循環を大切にし、集落で子孫を育てて、地域を引き継いでいくという地域文化を築き上げている。古いムラの閉塞性を壊しながら、新しいものを交流を通じて取り入れ、しかも、風土を大切にした、地域の活性化を図っていく。人と自然の見事に共生させた、持続型の循環型社会をここでは構築している。

 

○宮崎県諸塚村

宮崎県諸塚村は、公民館制度をいったん引いた後、旧来の自治を新たなる制度に併せて作り変え、集落自治を継続した点に特徴がある。どの集落も集落固有の地域資源を活かし、地域文化、伝承技術を尊重した地域づくり、生涯学習を行っている。諸塚村は、綾町と並んで、自治公民館制度が発展した地区であり、また、住民自治のもっとも盛んな地域とされている。(自治方式は別紙の通りである)

○鳥取県智頭町

鳥取県智頭町は、土建行政と首長の相次ぐ交代を受けて、不安定な町政がおこなわれていた町である。

 

 

 

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