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○こんなふうに述べると、ボランティア活動に目をむけがちになりますが、館としてはそう短絡的に見るべきでないと思います。活動をする前には必ず会議をしています。月1回の全体会議とその前に運営委員会を開いています。職員は顧問として出席しています。直接不満を職員に言ってくることもあります。また、男女間のトラブルも、職員に持ち込んできます。あまり深刻に受け止めないで、よく話しを聞いてあげることがいいようです。押し付けないで、解決は本人が考えるというのが基本のようです。しかし時には『今彼はこんな事で困っている』と、彼等の友達に相談を持ちかけることもあります。職員もあまり抱えこまないで、少し上の学生のメンバーにも助言を頼みます。

会議では一人一人が意見を言うまでに時間がかかりました。また、『スケジュールを押し付けないで欲しい』と言われ、学校や、家庭、アルバイトなどあって『おれたちは忙しい』という互いの気持ちが確認されていました。その結果みんなでやる事を多くしないで、個人の意思で参加する取り組みも入れることになりました。それが1月10日の音楽祭です。

意見を言う事と同様に、“焼肉定食”のニュースの原稿もみんなが書くことになって、社会人のメンバーから児童館にワープロが持ち込まれた。

2. いくら活動ができるようになっても、彼等にとって児童館は居場所です。

児童館の持つソフト面を考える。

○このような日常の活動と一人一人のことも考えるという、みんなの努力が彼等に自信と安心を付けてきていると感じられます。そしてこれまでより、児童館に頻繁に顔を見せていると思います。

彼等に対して最近、小学生のちびっ子が『あそんで!』と飛びついています。男の子は男子学生に、女の子は女学生です。ちびっ子は体ごとぶっつけていますが、適当に上手に相手をして喜ばせてくれる、微笑ましい風景が見られるようになりました。児童館全体が暖かい雰囲気に包まれているように思います。小さい子どもが大きい子どもに遊んで貰うというのは、昔から人の育ちのなかで重要な一つになっています。だから異年齢の遊ばせようという試みを学校や地域でされていますが、その場限りになって継続していません。無理に、機械的に大人が子どもに『遊んであげなさい』、『遊んで貰いなさい』となっているようです。

児童館が居場所として存在するだけでは弱かった子どもたちの縦のつながりは、居場所をスティションにして活動が起こり始めた中で、変化が起こってきた事に注目しています。いま言えることは、居場所をもっと良い居場所として存在しなければいけない、子ども(中高生も)にとってもっと良い居場所とはを考えますと、人間的で家庭的な暖かさが児童館全体に求められると考えます。それには小さい子どもの集団である学童保育(学童クラブ)にも、暖かで、やんちゃで、仲間意識が育っているということです。そういう雰囲気があるから、児童館にお兄さん、お姉さんが生まれてきていると感じます。

“焼肉定食”にも共通していることは、高校生だけのサークルではなく大学生や社会人もメンバーに入って、一緒に活動して、会議にも出席して意見を言っています。時には先輩としての話しを高校生にしています。このような異年齢集団の経験が、小さい子に対して暖かな行動が取れると考えています。

このソフト面をもっと豊かにしていきたいものです。

3. 高校生の気持ちに添った活動の援助を。そして広がりを。

“焼肉定食”のメンバーの中には居場所としてではなく、児童館のキャンプにユースアクションとして参加したのがきっかけで入った人、将来子どもに関わる福祉の仕事をしてみたいと考えてボランティア活動をしようと思っている人も居ます。メンバーではないが児童館に良く来る高校生もいます。

こうした人は高校での活動の場を持っていて、いつも来ているという状態ではありません。しかし青年のボランティアを育てたり、地域活動の働き手になってくれる人達です。児童館ではまだこの取り組みが進んでいません。98年度のなかで一歩前進したのは、“焼肉定食”の全体会議で会員の自主活動も話し合われ、認められたことが大きいと思っています。このことを良く考えていきたいです。

昨年12月に二つの高校の学生が児童館に注目してくれた事を報告しています。1月にはタイプの違う高校生のグループが協力して音楽祭をしました。こうしたタイプの異なるサークル、児童館に来る目的の違う個人、これらの共同の場と広がりをこれからも作っていきたいものです。

 

 

 

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