1. バードウォッチング案内の前に
案内で最も重要な点は、相手に対する配慮です。「どんな人で、何を求めているのか」によって、こちらが伝えたいことや伝え方が違ってくる場合があるからです。例えば性別や年齢、職業や立場、さらには性格によって、感じ方、考え方はずいぶんと違うでしょう。
相手がどんな人であれ、基本的には親切で誠意ある対応を心がけることです。例えば望遠鏡を使う時は、高さを身長の低い人にあわせておくとか、説明する時は相手に対して背を向けないなどの、相手本位の対応の積み重ねが誠意を伝え、信頼を生みます。
そう考えると、案内する場所や位置にも配慮が必要です。例えば、うるさい場所、暑さや寒さの厳しい場所、あるいは細い道、危ない道、相手から逆光になる位置などはできるだけ避けた方がよいでしょう。また、タイミングも大切で、静けさを味わった方がいい時もあるし、相手が考えたり感じたり、感動している時に説明を加えて逆効果になることもあります。
『野鳥かみしばい』(1996年,日本野鳥の会)の「利用の手引き」では探鳥会での解説のT.P.0.(時、場所、場合)として以下のように書いてあります。
山地でのコースのように、狭い道の途中で改まった説明をするのは無理が生じます。広場などで、休憩の時などを利用して説明すると、メリハリをつけることにもなります。バードウォッチングの最中は、その場、その時に出会った鳥の種類の説明が中心になりがちです。休憩時や昼食時は「鳥とはどういう生き物か」「野鳥の魅力」「バードウォッチングの楽しみ方」「野鳥の見分け方」「野鳥と環境」などの基礎的な話をするチャンスです。
あまり面識のない方に案内する場合には、相手を知り、その方と仲良くなっておきたいものです。コツとしては、ゆとりを持って相手を見て、反応を確かめながら対応すること。会話のやりとりがあると相手を知る上でも、案内人からの一方通行にならないためにも役立ちます。野鳥の話ばかりではなく雑談も効果的で、親しみやすい雰囲気作りにもなります。