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例えば、秋に木々の葉が落ちても、林が落葉で埋まることはありません。長い年月の中で木が倒れたとしても、倒木はいつまでも倒木ではないはずです。落葉や倒木は、バクテリアや菌類が分解して土となっていきます。そこに日光や水が加わって、再び植物による生産活動に結びついていくのです。

環境問題を解決するには「社会を維持可能なものに変えていくことが必要だ」といわれます。それはヒトという生物が、この星の「共存」や「循環」というしくみを無視して、大量生産、大量消費、大量廃棄を続けて繁栄してきた結果、持続不可能な事態を招きつつあるからです。

鳥が鳥だけで存在できないように、人もまたさまざまなつながりの中で生きています。人は、さまざまな食物を自ら生産しているように思っています。ご飯を食べる時、農家に感謝しても、イネという植物のお陰とはなかなか考えません。でも、イネやそれを支える日光や空気、土や水のお陰なのです。私たちは船や飛行機をつくることができても海や空はつくれないし、遺伝子操作ができるようになっても、葉っぱ一枚つくることができません。結局、私たちも生物の一種であり、自然がなくては生きていけないということになります。

ヒトは高い消費レベルにありながら驚異的な生存率で数を増やし、かつて自然界になかったスピードと規模で他の生物を圧迫し環境を変えて繁栄してきました。一方、そうやって共存と循環のしくみからはみ出したことを自覚することができ、反省することができるのであれば、地球が46億年かけてつくり上げたしくみに学び、省エネルギーやリサイクルなどを考えて持続可能な社会をつくっていく責任があります。また、それはヒトという生物にしかできないことなのです。

 

 

 

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