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2. 理念

 

(1) 理念の明文化に際して

日本野鳥の会は、1934年の発足当初から、創設者中西悟堂が唱えた「野の鳥は野に」という自然を本来のままに保護する主張を一貫して掲げてきている。以来、探鳥会をはじめ野鳥とその生息地を守る幅広い運動の実践には、自然の中で野の鳥と親しむことこそ野生の生きものと人間の関係における本来の姿であるという基本的な考えが、脈々と流れているこ地球規模での自然環境問題に対しても、日本野鳥の会の根本的な主張はいささかもその輝きを失ってはいない.

人類の将来がかかっている自然との共存という今日的かつ永遠の命題に対して、会員や支部の役員・リーダーの皆さんの理解と協力を得て、日本野鳥の会の活動はますます発展し社会に対する重要性を増して、その責任はさらに重くなってきている。また、本会の活動を支援する層は年々厚くなり、関係者も多様化してきた。そこで、日本野鳥の会の発足当時の考え方やこれまで会として主張してきたことを集約し表現しなおして、本会の活動がどんな思想哲学に基づいて展開されているのかを誰の目にもわかるようにまとめて明文化したのが、以下の理念である。

 

(2) 理念の全文

人間を含むすべての生きものは、過去40億年の進化の所産であり、この地球上で等しく生存する権利をもっている。私たち人間は、同じ地球環境に生きる一員としてこれら諸生物の生命を尊重しなければならない.自然は、人間の判断を超越して善悪虚偽のない、あるがままの姿で存在している。そこに自然のもつ根源的な価値があり、それ故にこそ、自然は人間が人間らしく生きるために大切な心の糧の源泉となっている。一方、自然界は、いろいろな生物とそれをとり巻く無機環境との複雑で微妙な相互関係の上に成り立っている。人間の無謀な環境破壊によってその相互関係を乱せば、自然界全体のバランスを大きくくずし、ひいては私たち人間自身の生存をもおびやかすことになる。人間は、適切な価値判断に基づき、自然を賢明に、永続的に保護し利用することによって、諸生物を含めた自然との共存をはかるべきである。

以上の基本的な認識にたち、日本野鳥の会は、野鳥を通して自然に親しみ自然を守る運動を展開していく。数ある生きものの中でも、野鳥は

 

 

 

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