(2) 物流情報化に向けた課題
1]経営者の意識喚起
経営者アンケート調査結果によると、規模の大きい事業者ほど「情報化の進展は自社にプラス」とする経営者が多くなるのに対し、規模の小さな事業者では「情報化の進展の自社への影響は小さい」とする経営者が多くなっている。また、今後の情報化の意向については、規模の大きい事業者ほど、「積極的に取り組んでいきたい」とする比率が高い。このことは、中小事業者が情報化は自社にあまり関係ないと認識している間に、大規模な事業者が情報化を活用し、結果的に両者の経営基盤の格差が拡大してしまう可能性を示唆している。
一方で、同アンケートによると、ネットワーク化への取り組みの動機として、43.4%が「形成者の独自判断、意向」と回答しており、経営者の情報化に対する認識と判断次第で情報化への取り組みに大きな差が出る可能性が高い。
こうしたことから、中小事業者における情報化を促進していくためには、情報化の動向やメリット・デメリットを明確化し、実務を行う現場スタッフと経営者との間の意識の乖離が生じないよう、経営者レベルでの情報化に対する理解を深めていく必要がある。
2]情報化の取り組み方法に関する情報提供と相談
経営者アンケート調査結果によると、情報化への取り組みにおける課題として、「費用に見合う効果があるかわからない」が最も多く、40.3%が回答し、また、「情報化への取り組み方法がよくわからない」とする比率も10.5%となっている。これらは事業者規模にかかわらず回答率がほぼ同じであることから、全般に情報化の効果や具体的な取り組み方法についての情報提供が十分でないといえる。
また、行政や業界団体に期待することとして、比較的規模の大きい事業者では、人材育成講座やセミナーの開催など多いのに対し、規模の小さな事業者では「情報化に関する相談窓口の設置」が最も多くなっている。このことから、大規模な事業者であれば、必要な情報を得ることによって社内スタッフが具体的な方法を検討できるのに対し、零細な事業者ほど、社内で検討できる体制が十分でなく、事業者個別の事情に応じた情報化の「指南役」の存在が求められている。
3]零細な事業者における事業者間の連携
経営者アンケート調査結果によると、情報化への取り組みにおける課題として、「費用に見合う効果があるかわからない」が全体では最も多いが、これは事業者規模にかかわらず40%程度が回答している。一方、これに次いで回答の多い「システムを利用するほどの業務量がない」については、保有車両数15台以下の事業者では44.8%が回答しているのに対し、同16〜50台の事業者では25.4%、同51台以上では10.9%に過ぎない。