6-6 落雷対策
船舶における落雷被害には、スパークによる可燃物への引火・火災、サージ電圧による無線装置などの損傷、衝撃による船体付構造物の破損などがある。ここではスパーク及びサージ電圧による落雷被害の防止、軽減対策について記述する。
船舶における落雷被害の防止対策の基本は、マストやステーなどの接地を確実に行い、雷電流を速く海水(鋼船の場合は船体)に逃がすことである。鋼船の場合は船体への接地も容易であるが、木船やFRP船では接地板の取付けが重要である。
-1. 落雷時のスパークによる引火を防止するためには、可燃性ガスの排出口や可燃物の近くにアンテナなど落雷を誘導するものは取り付けないことが重要である。
-2. 最近の船舶搭載機器には半導体やICが多く使用され、機器の信頼性向上に大きく貢献しているが、半面、弱耐電圧化となり、雷サージ電圧の影響を受け易くなっている。
トランジスタ使用機器の被破壊電圧は50〜100 V、IC使用機器のそれは数十V以下である。
サージ電圧には、1]アンテナへの落雷により回路に直接誘導するものと、2]雷電流の流入による船体電位の上昇に起因して回路に生ずるものとがある。
雷電流の大きさ、回路内に生ずるサージ電圧、環境条件などの違いから、完全を期すことは困難であるが、サージ電圧の発生メカニズムを理解して、適切な対策を施すことにより被害を軽減させることはできる。基本的な対策を次に述べる。
(1) アンテナからの侵入サージに対しては、アンテナ引込口に避雷器(アレスタ)を取り付けて侵入サージを阻止する。(マスト頂部のアンテナや自立型アンテナなど。)
(2) 自立型アンテナなどのアンテナ接地機構(アンテナ切換器)のあるものは、接地抵抗の低減を確実に行う。
(3) マストや煙突などへの落雷によるサージ誘導電圧に対しては、機器及び回路に全面的な遮蔽(無線室全体のシールドなど)を施し、ケーブルはシース付を使用する。
(4) 雷電流による接地電位の上昇を抑制するため接地抵抗の低減を図り、全体的に電位差が生じないようにする。