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このようなシステムに使用できる電波の周波数として、406〜406.1MHzがあり、この周波数帯を使用して、前述した121.5/243MHzのEPIRBの欠点を除くシステムが、コスパス・サーサット・システムで開発が行われ、それがGMDSSで採用されて極軌道衛星利用非常用位置指示無線標識装置となった。これと同じような技術を使用するシステムがアメリカで開発され、フランスに技術移転されてARGOSと呼ばれるシステムになった。このARGOSシステムは、潮流測定用の浮標、渡り鳥、極地の探検家等の位置測定などのデータ収集システムで、使用周波数も近い。コスパス・サーサットの衛星は、このARGOSと同様の技術内容をもっているので、衛星上で地上の送信機から電波の受信周波数を測定して、それを受信データとともに衛星上に記憶しておき、それらを繰返して送信している。したがって、地上の送信機の位置に関係なく、衛星上の記憶装置が一杯にならない限り(一杯になると古いデータから消される。)全世界のLUTが全世界の遭難のデータを取得できる。また、その船名符号なども得られ、さらに、地上の送信機の仕様も新しく規定できるので、その位置の測定に必要な送信周波数の安定度なども必要に応じて規定できる。こうして、406MHz帯を使用したEPIRB(及びELT)に関しての多数の実験が続けられ、システムの運用も始められている。我が国は、システムの当初からの参加はできなかったが、実証実験には積極的に参加をしてきた。

コスパス・サーサット・システムの地上施設は、局地利用者局(LUT)とミッション制御局(MCC)とから構成される。MCCは各国の海上救難センターであって、わが国では海上保安庁がこれにあたる。LUTは、開設準備中の局を含めて全世界で30局が開局され、わが国では、海上保安庁の横浜の通信所にその局が作られ、GMDSSの運用開始に合わせて、正式に運用がなされている。前述したように406MHz帯のときは衛星で受信した信号は、衛星がLUTの受信範囲内にきたときに順次それらのLUTで受信される。

(2) 極軌道衛星利用非常用位置指示無線標識装置の規格

406MHzEPIRBのIMOの性能基準は、決議A.763Hzに「406MHzで作動する自由浮揚する衛星EPIRBの性能標準」がある。

まず、新勧告の本文では、1]1994年11月4日又はそれ以後に装備するものは、この決議の付録に規定した性能標準に従うこと、2]1994年11月4日以前に装備するものは121.5MHzのホーミングビーコンを備える必要はないものを除いてこの標準に従うことになっている。

 

 

 

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