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これらの海事衛星通信及び遭難・安全システムの理解を助けるために、人工衛星の基礎的事項をまず解説する。

 

9.2 人工衛星とその軌道

石でもボールでも良い。それを上に向かって投げると、ある程度の高さまで上がって、落ちてくる。これは地球よ引力(重力)があるからで、このときの石の飛んでいる道筋が放物線である。飛行機やヘリコプタは地上に落ちてこない。ヘリコプタの例でいえば、これは上向きにプロペラを回して地球の重力に逆らって上向きの推進力を作り、それが重力と釣合う、つまり平衡すれば空中に静止することができるからで、エンジンが止まれば、墜落をする他はない。

石に紐をつけてぐるぐると回してみよう。石は回している手を中心にぐるぐると円を描いて回転する。これは、石にそのような回転力を与えると、石は紐から離れて遠くへ飛んでいこうとする力が働き、これを遠心力という。この石がとんでいかないのは、紐がついているからで、紐が石をその描いている円の中心つまり手元の方に引張っているからで、これを求心力といい、この場合は、遠心力と求心力が平衡していることになる。石をゆっくり回すと遠心力が弱くなり、平衡がやぶれて石は回らなくなる。

ロケットに人工衛星をのせて打上げるとどうなるか。ロケットは、始めは真上(又は斜め上方)に打上げられるが、ロケットの推力にもよるが、地球の重力が働き、その軌道は次第に斜め上方から地球面に平行近くになってくる。こうした状態で、ロケットから人工衛星が打出される。地球の上空はもはや空気がないので、人工衛星は、空気の抵抗で減速されることなく、ロケットを離れたときの速度のエネルギーを永久に保ち続けることになる。こうして、人工衛星は、その速度による遠心力が地球の重力と平衡できる高さと速度エネルギーをもてば、もはや地球にもどることなく、地球を回り続けることになる。ロケットの推進力が不足するとこのような状態は得られず、衛星は地球に落ちるか、地球の大気圏の空気の抵抗で発熱し、燃え尽きてしまい、打上げは失敗となる。

こうして、人工衛星は地球を回るが、それは、地球の衛星である月が地球のまわりを回り、地球と火星、土星などの惑星が太陽のまわりを回るのと同じである(地球の重力圏を離れるように打上げられて太陽を回るのは人工惑星と呼ばれる)。

そこで、人工衛星は、各種の天体と同じ法則に従って運行する。その法則はケプラーの法則で三つの法則からなり、各惑星の運動の観測によってヨハネス・ケプラーによって導き出されたものである。

 

 

 

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