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7・6・1 サイラトロン

サイラトロンはガラス管の中に陰極と陽極及び格子を構成した、一見真空管と同様な電子管であるが、真空管は管内が高真空であるのに対して、サイラトロンでは管内にアルゴンや水銀などの蒸気が適切な圧力で封入されている。このようなガスを封入した電子管を一般には放電管と呼び、冷陰極放電管と熱陰極放電管とがあって、熱陰極放電管の中で格子を持っているのがサイラトロンである。放電管のシンボルマークは真空管とよく似ているが、管内にガスが封入されているという意味の黒点を付してその区別をしている。(図7・20)

 

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図7・20 放電管のシンボル

 

サイラトロンでは、格子(グリッド)に適当な負の電圧を掛けておく陽極と陰極の間に電流は流れないがその格子の電圧を次第に上げていくと、電流が流れ始める、というよりは管内に放電が起きて大きな電流が流れる。この場合の真空管との相違は、一度放電が起きると、もう格子は陽極と陰極の間の電流を止めたり、その大きさを制御することができなくなってしまい、電流(放電)は、陽極の電圧が放電ができなくなる程度にまで低くなったときに停止し、このとき格子は再びその放電を開始させる機能を取り戻す。(図7・21参照)

 

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図7・21 サイラトロンの特性例

 

サイラトロンは放電が開始されると、管内のガスが陽イオンと電子に電離をして、プラズマと呼ばれる発光をする。この電離をされた電子は、陽極に引かれて電流の一部となり、一方の陽イオンは格子の負電圧に引かれるが、こちらは電子に比べその質量が非常に大きく、移動速度も遅いので、格子に吸収されることもなく、その回りに集まって、格子の負電圧を打ち消す作用のみをするようになる。ただ、これも格子の間隔が狭いと、格子の部分全体が陽イオンで一杯になってしまって、陰極からの電子はそこで陽イオンと再結合して陽極には電流が流れず、放電も止まってしまう。

 

 

 

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