4] 最大許容コレクタ電流Icmax
トランジスタ回路で、コレクタ電流が増加してある値以上になると増幅率が減少し始める。この値を最大許容コレクタ電流という。
5] 最大許容コレクタ損失Pcmax
ICとVCEの積がトランジスタ内部で失われる電力であり、ほとんどが接合部で発生する熱となる。この熱による温度上昇が接合部許容温度を超えないための最大電力値である。
6] 接合部許容温度Tjと保存温度Tstg
トランジスタの接合部の温度がTj を超えると特性が劣化して不良になるので、この値を規格表でよく確認すること。ゲルマニウムトランジスタでは70℃〜100℃、シリコントランジスタでは 150℃〜180℃である。またTstgとは保存しておく場合の許容温度で、ゲルマニウムでは-55℃〜75℃、シリコンでは-65℃〜175℃である。
7] 安全動作領域と二次降伏
トランジスタを破壊させたり、劣化させることなく、高い信頼度で使用できる領域を安全動作領域(area of safe operation, ASO)と呼んでいる。このASOは最大電圧、最大電流、及び最大コレクタ損失で与えられるが、このほか、次に述べる二次降伏現象によっても影響を受ける。この二次降伏は(secondary breakdown)はコレクタとエミッタの間の電圧を上げていき、それが(6)の2]に示したVCEOを超えると一次降伏が起きるが、その後、更にコレクタ電流を増加させていくと、ある電流と電圧の関係の所で急に電圧-電流特性が低インピーダンスの関係に変わる所があり、ここで、トランジスタのエミッタとコレクタが短絡して破壊してしまう現象である。このような二次降伏の起きる電圧-電流点はトランジスタの普通の動作点近くにあり、トランジスタの入力回路条件、負荷条件、パルス動作の場合の条件、及び周囲温度等によってその点が変化をするので、注意を要する。なお、これらのデータは、一般の特性表では求められないので、製造者などから別に情報を求める必要がある。