5.3 港湾料金決定への影等
もう1つ、公共の所有に関わるコメントをしたいと思います。これは価格設定に関するものですが、荷捌き、貯蔵、物流は、民間企業が行っているわけで、その他の追加サービス、例えば、曳船の使用、係留、配船、設備の提供、維持、修復に関しても同様です。民間企業は、市場の動向に基づいて課金しています。これには国の管理、影響が入っていません。賃金交渉も同様に、組合、使用者間の団体交渉に基づいており、政府は関与していません。ハンブルク当局としては、3つの分野にだけ関わっていることになります。これはハンブルク港のオペレータ協会、フォワーダー協会、ハンブルク商工会議所との協議の後に、あらゆる地域、埠頭に関わる賃貸料を設定します。また、商業用外航船が支払わなければならない料金は総トン数と接岸時間に依存しています。そして水先人の料金を設定します。
1980年まで、水先人というのはハンブルク港においては公務員の立場であり、その給与、労働時間に関しても、公務員の原則に基づいて決っていました。これがいろいろな問題を起こしたわけです。水先人は所得に満足せず、ピーク時においてはオーバータイムで仕事をしたがらないということから、水先人の労働力不足に陥ることもあったわけです。そこでシステムを改変いたしました。今や独立した水先人協会があり、労働時間、勤務の割り当てに関しても、政府の関与なくまとめられ、さまざまな航行面を考慮にいれて、港長が監督しています。ハンブルク港において公共が関与するのは、外航船舶の船長が水先人になる場合の所得に関する最低保証の項目だけにとどまっています。
船社あるいは海運業者が、北西ヨーロッパの特定港を使用するかどうかについては、非常に大きな競争の枠組みに基づいて決っています。(スライドを示しながら)これは西のルアーブルから東のハンブルクまでの内陸の主要港はますます背後圏が重複しています。港の数、質以外に、価格競争力も成功の重要条件となっているわけです。輸送の連鎖を考えると、貨物の出発地から最終目的地まで一貫のサービスを考えなければなりません。これらのサービスの個別の価格によって、輸送形態、あるいは特定の港の使用が決まるのではなく、総輸送費用によって決まるわけです。したがって、一部のサービスだけを考慮に入れたコスト比較によって誤解してはいけません。ただ、確かに個別のサービスの単価も港の競争力に対する影響力をもちます。ハンブルク港が課金している料金は、輸送コスト全体の一部だけですが、それでも非常に慎重に、競争力を十分加味した上で決定しています。
6. 結論
結論に入りたいと思います。港湾の公共所有のモデルについてお話してきましたが、原則として、これはヨーロッパ北西部にあるアントワープ港、ブレーメン港、ロッテルダム港でも適用されています。これはハンザ同盟的なモデルであるとみなすこともできます。同時に、港における荷役ビジネスは、民間に全面的に委ねられるよりも、官民両方のパートナーシップも考えられるわけです。これが唯一のシステムあるいはベストのシステムであると言うつもりはありません。それに代わる代替案も考えられます。ただ、港の存在の主目的である、迅速かつ信頼性のある効率的なサービスを、妥当な価格で万人に提供することが可能でなければなりません。そして、これが企業、また一般の利益にかなっていなければなりません。われわれハンブルク港においては、これらのニーズを公的な所有というハンザ同盟型のモデルによって達成していると思います。ご静聴ありがとうございました。