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5. 港湾の公共所有による影響

5.1 港湾インクラストラクチャーの財務に関する影響

公共による所有の結果、いろいろな影響が考えられます。まず港湾のインフラストラクチャーに関わる財務面に対する影響があります。ハンブルク港では北西ヨーロッパの他の港と同様に、インフラ整備は公共の任務であると考えられています。これらの港におけるインフラ整備が、公共面から財政的な手当がされるということになるわけです。これが公共の港の所有に関する論理的な結末ではないかと思われます。確かに受益者負担の原則を適用せよという声もあり、もし使用者によってまかない切れないのであれば、国の補助、助成金のかたちで、公共の当局が資金を提供するといった考えがあります。ただ、このような見解に私は同意することができません。というのは、今まで使用者がインフラ整備の総コストを支払うような輸送形態というのはありません。EUにおいても、この原則論に関しては長年討議されていますが、まだ解決策は見つかっていません。逆に、一部の諸国においては、鉄道、道路の整備、さらに鉄道と航空の運営に関しては、公共の債務として補助金対象となっています。そういったことから、海上輸送だけに受益者負担の原則を導入すること、あるいは港湾部門にだけこの原則を導入することは妥当だとは思いません。というのは、特に海運においては、輸送形態の中でも最も費用対効果が高く、環境にやさしいものの1つであるからです。

 

5.2 リースに関する影響

ハンブルク港の公共管理においては、港全体の利益を考えなければならないと思われます。ということは、港に新規の企業を誘致するために努力する、そして賃貸をするということを考えなければなりません。その管理方法ですが、他の港が導入しているようなどの企業がどの場所を得るべきかを決めるための入札制度をハンブルクではまだ整備していません。また、入札を呼びかけることもやっていません。どの企業がどこを得るかという決定は、当事者間の交渉に基づいています。企業はわれわれに接触し、その要求に応えるためのさまざまな可能性を洗い出すわけです。その際に適用される基準としては、その企業が港湾関係の事業を運営しようとしているのか、そして港にとって特別な利益があるのかどうか、例えば港の顧客に必要であると思われるような補完的なサービスが期待できるのか、どのような規模、どのような立地が求められているのか、水路、鉄道との接続は必要なのか、適切な場所があるのか、あるいはいつまでにこれが開発できるのか、どれだけの雇用が創出されるのか、そして新規事業による付加価値はどれくらいか、こういったことが現在非常に重要な側面となっています。例えば、石炭、鉄鉱石、スクラップのようなばら荷貨物の荷捌きということになると広大な面積が必要となります。ところが、雇用創出はあまり期待できない、そして付加価値もあまり生み出せません。それで、新たなばら荷に関わる業務を認めることに関しては積極的ではありません。

さらなる基準としては、公共部門のほうから、いつまでにどれだけのインフラに対する投資が必要なのか、また民間企業がどれだけ上部構造に対する投資をする意志があるのか、そして最後に、その土地に対して他の企業が関心が有るのかどうか、こういった基準をすべて確認した上で、最終的な結論として、このパートナーとリース契約を結ぶのか、あるいはこれを拒絶してより良い条件のものを待つのかということになります。賃貸料に関しては言及しませんでしたが、港の土地を貸し手としてはハンブルク当局が独占的な権利をもっているため、あらゆるテナントに対して、同じ質の土地に対しては同じ価格を、という考え方をとっています。

 

 

 

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