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さらに港というのは、対外貿易を可能にすることから、国家的任務を果たすわけです。港がなければ、グローバルな通商の基盤となる海上輸送も不可能です。今まで、多くの港は国家経済の上で重要な役割を果たしています。多くの国では、輸出入のための港を利用することで国際的な貿易に参加することができます。よい例として、ヨーロッパでは英国、あるいは日本といった島国があげられます。また海岸線のない内陸国であっても、他国の港の通過地点としての機能を利用して国際的な貿易を行えます。このように港は、それ自体が富を創出し、近隣国に対しても富を生み出すわけです。

この2点から、結論として、港は公的な機能を果たすと思いますし、公共の管理当局としても、港の発展、繁栄に関心をもち、これを全面的に民間部門に委ねるべきではないと思います。ただ、他にも要素があります。港は、そのロケーション、海上アクセス及び内陸部への接続の良さなどの通常の港の質に関わる要件の他の次の4つの要素があります。まず、設備投資とその運用、ノウハウ、労働力、十分な施設を立地するための陸域及び水域です。最初の3点はそれほど問題なく増やすことも変えることもできると思われますが、4番目の、臨海部における土地に関してはいろいろな厳しい制約があります。多くの諸国で面積が限られている、地理的状況、水理学的な条件、政治的な国境線、あるいは環境の理由から拡張することができません。特に現在、環境に対する意識が増しているなかで、緑地を工業地域に変えることがますます難しくなっています。たとえばAltenwerderでの拡張プロジェクトに対しては、緑の党から強い反対がありました。ただ最終的に高裁判決によって建設を続行しても構わないということになりました。港の土地というのは貴重であり、慎重に使っていかなければなりません。これは公共の所有によって達成できると思われます。一定期間リースし、民間の投機の対象にならないようにすればいいわけです。

最後に、公共の所有によって、港の土地利用をコントロールすることもできます。港は、迅速かつ信頼性があるようなサービスを顧客に提供できるよう諸活動を統合しなければならない複雑な有機体です。また、船舶、貨物、旅客のあらゆるニーズをみたすための一連のサービスが求められます。私の知るところ、この目的をみたすためには、公共のコーディネーターが有用であると思います。特に、港に求められる、あるいは必要な事業体を誘致し、選択する、そして地主として適切な立地を提供することができるわけです。一方、地主となっている民間企業がこの責務をみたせることを否定はしません。ただここで働く原則というのは異なっており、当局は、公共の福祉をみたさなければならないということから、広範なサービスとして、さまざまな事業者間の競争や、港湾活動の地域的さらには国家的経済効果を考えていかなければなりません。このような公共の債務とは対照的に、民間企業というのは、自社の商業的な利益を追及し、利益の極限化を図り、株価を最大に引き上げることに向けて努力するわけです。市場経済においては、これはもっともなことですが、個々の民間企業の利益が、場合によっては社会的発展と逆行することもありうるわけです。

単純な例をあげて説明したいと思います。ハンブルク港においては、(スライドを指示)ここに精油所がありましたも50年間その精油所がありましたが、土地のリース契約が切れた1995年にドイツにおける精油所の過剰供給が原因で閉鎖されました。この土地は港の管理に戻され、近隣のコンテナ・ターミナル拡張用地として使用されることになりました。おそらくこのことは、精油所の土地が民間所有であったならば可能ではなかった、あるいは難しかっただろうと思われます。石油会社は一定期間この土地を放置し、汚染された土壌を浄化するためのコスト削減を図ったのではないかと思います。あるいは、このコンテナ・ターミナルの拡張に対する需要を知っていながら、非常に高い不動産価格を要求したのではないかと思われます。

 

 

 

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