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しかし今回の講演から考えて、私は、港湾における陸域と水域の所有に限定してお話ししたいと思います。したがって、公共所有港湾における港湾の陸域と水域は、国や地方自治体によって所有されているということです。しかしながら、これは港湾の運営について言及しているわけではありません。つまり、オペレーションは民間事業者によっても行われうるということであり、公共所有港湾と民間による港湾ビジネスの組み合わせは、ランドロード型港湾、地主型港湾のモデルといえます。このモデルについてさらに説明するために、ハンブルク港の状況をお話しいたします。

 

3. ハンブルク港の置かれた状態

3.1 連邦政府と州政府の責任

ハンブルクは地方自治体であり、都市であり、同時にドイツ共和国連邦の16の州の1つです。面積では2番目に小さな州ですが、政治、経済上の重要性ではさらに上です。ハンブルクは独自の議会と自治体を有しています。立法と行政は、連邦政府と個々の州がともに関わっています。ドイツの憲法によると、港湾問題というのは個々の州の責任の下にあるということです。連邦政府の省は、原則的には港湾については何らかかわり合いがありません。しかし、彼らは港湾問題について他の分野の仕事を通して関与しています。たとえば、エルベ川はハンブルク市、ハンブルク州の外にあり、連邦の航路で連邦運輸省が管理しており、運輸省によって維持されているわけです。連邦政府は、航路の浚渫をハンブルクと北海の間で行い、100km以上の距離を超えるものです。またそのコストも連邦政府が支払っています。同様の状況が、国の高速道路や鉄道でもみられます。もし連邦政府がきちんとした状態でこれらを管理しないと、港湾が不利益を被ることになります。

また、連邦政府は最終的には外交問題を担当しています。今日では主にEU(欧州連合)における仕事を行っています。港湾関係者の利益の代弁をヨーロッパレベルでやってもらうということで、妙な状況があるわけです。すなわち連邦政府は、国家レベルでは港湾の責任は一切もっていません。しかしながら欧州委員会、また欧州の閣僚理事会においては、ドイツの港湾の利益を代表し、そのために弁ずる必要があるわけです。

ハンブルク港は民間事業の商業活動のための区域です。政府の役割は、下記のものに限定されています。つまり、港湾と港湾活動に関する法的枠組みの設定、港湾開発のための政治的ガイドライン設定、港湾のインフラの計画づくり・建設・保全、交通規則・交通監視、土地の管理、関係企業に対する賃貸などです。しかしながら政府は、港湾ビジネスそのものに関与しているわけではありません。たとえば荷役、保管、物資の加工、二次輸送さらには貿易、銀行、保険、マーケティング、PRなどの業務には関与していません。これらはすべて民間企業が行っています。

 

3.2 港湾開発法

すでに申し上げましたが、連邦共和国政府の憲法によると、港湾問題は個々の個別州政府の責任であり、それらの管轄権の下にあります。これによって、ハンブルク議会は特別な港湾開発法を成立させ、次のような内容となっています。

この法ではまず港湾地域を定義し、ここでは75平方キロメートルの地域であり、ハンブルク市、ハンブルク州の10分の1を占めています。この港湾地域は、エルベ川とその支流流域にあります。この開発法は、港湾で許されている経済活動を定義しています。港湾の中で何でもしていいというわけではありません。というのも、港湾区域が限られているからです。このエリアは港湾関係の活動のためのみにとってあるものです。つまり、荷役、海上輸送貨物の保管、輸送、補足的サービス、港湾関係の貿易、乗客サービス、港湾関係産業、これを一言で言えば、ウォーターフロントに立地した強みを生かしたサービスと産業を指しています。その結果、港湾地域では居住は許されていません。港湾活動と住宅地は明らかに分かれています。それによって多くの問題が回避されているのです。

 

 

 

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