2] これらの3港においては、事実上ないしは形式的にも競争的な入札が行われていない。
3] 第一次売却の5港中、2港においては、実質的に意味のある被雇用者への株式の配分は実現せず、ボードのメンバーが大きな利益を上げるだけに終わった。
4] 河口における交通、施設利用の独占的な規制権を私的企業が所有したため、私企業は、むしろ競争を制限する目的でこの権利を行使する例が現実に観察される。
5] イギリスでは港湾間の競争は、過去、私有化以前から活発に行われていた。これはより促進された訳ではない。
6] 長期の投資及び港湾開発が損なわれる可能性のあること。
7] 私有化された港湾と、トラスト管理の港湾のパフォーマンスを比較すると、私有化港湾が優れているという結論は導けないこと。
(公設民営で競争力アップを図る大陸方式)
EUが、欧州における統一的な港湾政策を策定する検討をしましたが、これがまとまら無いようです。国によって港湾政策に大きな差があるためです。
大陸諸国、特に北海沿岸は、ハンブルグ港、アントワープ港、ロッテルダム港、ブレーメン港、ブレーマーハーフェン港などが近接し、港間の競争、あるいは同一港内でのターミナル間の競争が激しくなっています。これら北海沿岸諸港を持つドイツ、オランダ、ベルギーでは、港湾インフラの建設、維持費用は公共が負担し、上部施設(舗装、荷役機械、建物等)は、民間が負担することを原則としています。しかし、競争激化に伴い、民間が負担することとされている荷役機械等についてもポートオーソリティが整備して民間に貸し付けたり、ファイナンスを行ったりする事例が増えているようです。
イギリスなどは、港湾に対する公的助成はすべて廃止としていますので、大陸諸港と方針が異なり、EUの港湾統一政策はなかなかまとまらないものと思われます。
(公共の関与の度合いは、まちまち)
欧州大陸各国によっても、港湾の管理運営に関する基本的な考え方は異なっています。ドイツ、オランダ、ベルギーにおいては、市や州がポートオーソリティ通じて港湾の整備を支援していますが、国の関与の度合いは極めて低くなっています。ドイツ、オランダ、ベルギーの港湾では、港湾管理者は土地、施設を所有し、これを民間会社に長期に貸し付けて収益をあげる公設民営方式です。自然条件の厳しい港湾では、外海に面する防波堤の建設や大河川の航路浚渫などの費用を国が負担するなどして、国際間での競争力を維持を図っています。
フランス、スペインは、歴史的に地方に対する国の関与の度合いが強い地域です。前述の3ヶ国に比べて競争的環境が緩やかであることなどから、競争力向上より雇用創出に力を入れた運営を行っています。スペインでは、港湾の各種サービスを港湾公社が自ら提供していましたが、公社の民営化を進めています。
4. まとめ
ハンザ同盟の頃、港は都市の財産であり、人々の商売、雇用の場として生活基盤そのものであったはずです。船舶の発展とともに港の形も変わり、19世紀半ば頃から近代的な港の形が出来てきました。アジアの主要港も、19世紀半ばに開発され始めたものが多くみられます。その後、コンテナ船の発達で港の様子も大きく変わり、最先端のコンテナターミナルは、屋根のない巨大自動倉庫のようになってきています。