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3. 米国方式・英国方式・大陸方式

 

(州により様々な形態のある米国方式)

アメリカの主要港湾は、19世紀半ばから民間鉄道会社によって開発されはじめ、20世紀に入ってから公共のポートオーソリティが、その施設を買収したり、新たに港湾施設を開発して、港湾の管理主体になったものが多くみられます。これは、民間会社による港湾運営では、系列外の船会社が差別的な取り扱いを受けたり、港湾料金が不当に高く設定されたり、あるいは必要な港湾施設が整備されなっかたりして、自由な貿易活動に支障が生じたためです。現在、400港以上の商港が公共のポートオーソリティにより管理・運営されています。

 

米国では、港湾の管理に関する権限は州に付与されていますので、各州により港湾の管理形態が異なります。港湾の管理を、郡、市、あるいは港湾行政区に委任している州もあれば、隣接する州が共同してポートオーソリティを設立している例もあります。米国の港湾管理形態に関する報告1/によれば、アメリカの主要86港の管理形態は以下の7形態に分類されます。

 

1) 州にまたがる事務組合による管理:ニューヨーク・ニュージャージー港他1港

2) 州による管理:ハンプトンローズ港、ニューオリンズ港、ボルティモア港など14港

3) 郡による管理:マイアミ港、エバーグレイデス港、クリーブランド港など9港

4) 市の管理:オークランド港、ロサンジェルス港、ロングビーチ港など14港

5) 特別港湾行政区:ジャクソンビル港、シアトル港、タコマ港、ストックトン港など39港

6) 広域特別港湾行政区:ポートランド港(オレゴン州)、サンディエゴ港湾行政区の2港

7) 信託統治領の港湾:プエルトリコ港、ヴァージンアイランド港湾局、グアム港など4港

 

(課税権を持つ米国ポートオーソリティ)

ポートオーソリティの権限は、州の憲章あるいは市の憲章で定められ、ワシントン州及がオレゴン州では、ポートオーソリティに課税権を認めています。この港湾税は、港湾行政区の住民が所有する資産に対して一定の割合で賦課するもので、港湾行政区が一つあるいは複数の郡の範囲と一致するため、郡の資産税の徴収と併せて行われています。港湾税の港湾営業収入に対する割合は、1995年実績でシアトル港33%、タコマ港11%、ポートランド港13%でした。港湾税はすべての地域で見られますが、ガルフ地域および太平洋岸北部の港湾で、港湾税による収入多くなっています。

 

(収益から市が経費を徴収するカリフォルニア州)

アメリカ港湾協会の調査によれば、大西洋岸北部港湾及び五大湖港湾では営業収益で赤字、その他は黒字です。営業収入に対する減価償却前営業収益では、太平洋岸南部の港湾が57.8%で極めて大きく、収益力の高さを示しています。このため、カリフォルニア州では、ロサンジェルス市、ロングビーチ市がポートオーソリティから、消防、警察等のサービスに要する経費として行政経費を徴収しています。1995年の徴収額は、ロサンジェルス港で33百万ドル、ロングビーチ港で5.2百万ドル、オークランド港で5百万ドルでした。

 

1/ Governance of US Public Ports, David J. Olson, University of Washington 1992

 

 

 

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