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2. 直営・公設民営・私有化

 

(私有化)

イギリスやニュージーランドなどで行われたような港湾の民営化は、港湾の所有を民間に移行させようとするものであり港湾の私有化です。発展途上国では港湾の所有は公的セクターに残し、運営の民営化を目指すものが主流です。BOTのような形で港湾の一部に民間ターミナルを設置させますが、基本的には公共の枠組みの中で事業が行われるものが主体で、港湾全体を私有化するような例はあまり見られません。

 

(BOTの導入、民間運営会社の設立を図る途上国)

東南・南アジア諸国での港湾管理者(ポートオーソリティ)の形態は、表-2のとおり整理出来ます。ポートオーソリティが港湾施設を所有し、ターミナルの運営、荷役などのサービスの提供まですべてを行っているものは、スリランカ、バングラディシュ、カンボジア、インド、ミャンマー、ベトナム、インドネシアなどです。これらの中でも、一部の港で民営ターミナルが出現しています。タイ、中国、フィィピンも基本的にはすべてを行うタイプのポートオーソリティでしたが、一部の港湾で、民間資本によるインフラ整備、ターミナル運営が進んできています。港湾の施設の所有はポートオーソリティに残し、運営や荷役サービスの提供を民間事業に移す方向に進みつつあります。

 

(民営化を進めるマレーシア、シンガポール)

マレーシアでは1980年代半ばから積極的に民営化を進めていますが、港湾会社の株式は未だ大半が政府系企業に所有されており、イギリスのような株式売却は進んでいません。また、プミプトラ政策(マレー系住民の参加の増大)もあるため、外資の参加はあまり進んでいない状況です。シンガポールは、直営タイプのポートオーソリテイ(PSA)でしたが、1997年10月から民間会社へと移行し、海外の港湾開発に積極的に投資するようになりました。しかし、PSAの株式は未だ市場に売却されていません。香港はターミナルの開発、運営とも民間企業によって行われてきており、その方向に変化はありません。

 

(直営から私有化まで)

 

港湾を所有し、運営と荷役作業まですべてを行うポートオーソリティをタイプ(I)、港湾施設を所有したりインフラ投資はするが、それを民間にリースしたり、運営を委託したりするポートオーソリティをタイプ(II)、施設も民間に売却して私有化してしまうポートオーソリティをタイプ(III)とすると、先進国はおおむね(II)と(III)に分かれます。途上国は(I)が多く、(II)あるいは(III)へ移行中です。先進国でも、ドイツなどの古くからある港湾では、直営タイプの性格を持つものもありますが、民間による運営が進んできているので、タイプ(II)に区分しています。イギリスなどは、タイプ(I)でありましたが、港湾労働者問題に対処するため一挙にタイプ(III)へ転換させました。イタリア、スペインはこの中間的なところがありますので、表-2のタイプ(II)欄の右端に寄せて分類しています。

 

タイプ(I)直営方式

タイプ(II)公設民営方式

タイプ(III)私有化方式

 

 

 

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