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フィリピン: マニラ港では、1989年からNo.1〜No.4コンテナターミナルをICTS社(米シーランド社が6.5%参加)へ運営委託。No.5ターミナルはICTS社が建設・運営。マニラ港では、ポートオーソリティがインフラを(場合によっては上物も)建設し、民間へリースする形態。BO方式一部採用。スービック港では、運営委託先の選定をめぐる決定に対してHutchison社とICTS社が係争中。

 

シンガポール: 1996年から公的責務を政府部門であるMPAに移管。97年10月からポートオーソリティ(PSA)は投資と港湾サービスの提供を行なう民間企業PSA Corporationとなった。今後、PSA Corporationの株式の民間売却を予定。

 

ベトナム: サイゴン港の下流では、VICT社(三井物産とシンガポールNOL社が参加)がベトナム初の民間コンテナターミナルを建設、1998年供用予定。ブンタウ地区にもBOTによるコンテナターミナル計画。政府はBOT開発を奨励しているが、投資者に対する税制等が未整備で、進出企業にとっては課題が多い。

 

中国: 香港は50年間の土地使用権を付与した民間開発。上海港、塩田港、珠海港などでは、Hutchison社と港湾当局との合弁会社。蛇口港、天津新港ではP&O社と港湾当局の合弁会社。大連港ではPSA Corporationと港湾当局の合弁会社がコンテナターミナルの開発・運営を行っている。中国は、港湾当局が主導権を持った民間誘致型の開発で、中央・地方政府の介入も大きく港湾料金は中央の管理下にある。

 

ミャンマー: 運輸省傘下の港湾庁が管理。ティラワ港では、C&Pミャンマー社(シンガポール、香港、中国、米国の出資)がコンテナターミナルを整備、1997年1月供用。政府は外資の参入を奨励しているが、タリフは港湾公社が一元的に決定する等が制約。

 

スリランカ: 全国の主要港湾は、港湾庁が直営で管理・運営。コロンボ港QEQ地区を再開発し、BOTでコンテナターミナルを整備する提案がP&0社からなされ、港湾庁との間で1996年当初から交渉中。計画地点の開発の適否、開発のための権利金の額等を巡り調整難航。

 

インド: 主要港はポートトラスト(港湾公社)が直営で管理・運営。ジャワハラルネルー港(新港)では、新しいポートトラストが設立され、コンテナターミナルを開発したが、95年から2バースの拡張をBOTで計画。NSICT(P&O等とインド側出資)を選定し、1997年1月から交渉中であるが現在未着工。ムンバイ港(旧ボンベイ)、チェンナイ港(旧マドラス)でもBOT開発を計画。

 

(途上国の港湾民営化の是非)

民営化により運営効率が改善したか、利用者サービスが向上したかという点では、民間セクターが旧来の港湾労働者以外の者を雇用できるようになることや、民間の運営方法が採用されることなどから、プラスの評価が多くなっています。しかし、港湾インフラの供給が促進されたか、施設整備の時間やコストが削減されたかという点に関しては、マイナスの評価も多くならています。これは、参加する民間事業者の公募、応札、選定、交渉、契約など各段階で政府の許可が必要となったり交渉が難航したりして、開発計画の遅延が頻発しているためです。

 

途上国の港湾では、民間運営の施設でもタリフの決定等には政府側が関与していることが多く、港湾の運営が完全に民間に任されているとは言い難い状況であります。しかし、厳しい予算上の制約から「外資の導入」は途上国に大きなメリットであり、多少の問題はあっても、今後、民間による港湾開発・運営が進むものと考えられます。

 

 

 

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