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参考資料6

 

公設民営 VS. 私有化

沖縄県土木建築部参事 鈴木純夫

 

1. アジアで進む民間投資による港湾開発

 

アジア諸国で民間投資による港湾開発が進んできています。筆者らが昨年、民間による港湾開発が計画あるいは実施されている港を調査したところ、アジアの12ヵ国で34港に該当例がありました。これは、各国の代表的な港湾民営化プロジェクトを調査したものであり、構想中のものまで含めるとさらに多くのプロジェクトがリストアップされます。表-1は、この34港の事例から更に代表的なものを抽出したものです。

 

(3大投資企業)

コンテナターミナル開発に実際に投資しているのは、香港の Hutchison Port Holdings、オーストラリアの P&O Australia及びシンガポールの PSA Corporationです。この3社のいづれかが地元資本と合弁でコンテナターミナル開発に参加している場合が圧倒的に多くなっています。この3社以外にも船会社、商社などが地元資本と合弁で参加している事例も見られますが、この3社の寡占状況といってよいでしょう。

 

(成立まで紆余曲折の多い民間参加型の開発)

海外民間企業の参加は、発展途上国にとって外資の導入、運営ノウハウの取得、技術移転、施設の効率的運営などが可能となりメリットが多いといわれています。しかし、自国産業の育成、運営収入の海外移転、民間選定手続き時の不公正、などで途上国側に不利益を生ずることもあり、途上国の港湾民営化の大きな課題となっています。一方、開発に参加する民間企業にとっては、単なる販売や建設請負よりは大きな収益が期待できますが、反面リスクも大きく、ハイリスク、ハイリターンの事業です。このため、民間事業者側はリスクを減らし利潤の最大化を図るよう計画します。この結果、その港の中で一番有利な場所、利益の確保できる場所を民間事業者に売り渡すこととにもなり、途上国によっては、これに反対する港湾労働者のストに発展するような事態も生じています。

 

(民間による港湾開発の進展状況)

アジア各国の港湾開発における民間の参加状況、港湾の民営化に対する取り組みをとりまとめると次のとおりです。

 

タイ: レムチャバン港は、B1からB4ターミナルをそれぞれ別の民間事業者にリース、B5ターミナルはP&Oと地元の合弁企業が30年間のBOTで建設し1998年運営開始。レムチャバン港はPAT(ポートオーソリテイ)監督下の民間参加。クロントイ港はPATの直営。

 

マレーシア: クラン港では、1986年に北港コンテナターミナルをP&Oの参加するKCT社にリース。96年には西港の12バースをKMTC社にリース、残り18バースはKMTC社がBOTで開発予定。マレーシアはの港湾民営化は、基本的には共同出資会社への運営許可付きリース。

 

インドネシア: タンジュンプリオク港第3コンテナターミナルは、港湾会社IIがインフラを整備、香港のHutchisonが20年間の運営を行なう。ボジョネガラ港のコンテナターミナルもHutchisonの参加を予定していたが、経済危機で中止。インドネシアでは民間事業者選定の不透明さ、公民の利益配分での民間偏重が課題。

 

 

 

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