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第2節 カナダの港湾管理運営

 

1 港湾の所有・管理運営に関する基本的考え方

 

カナダの商港は、現在(1996年)、民間港32港を除き、3種類の機関を通じて国により管理されている。主要港14港は、カナダ港湾公社(Canada Ports Corporation ; CPC、運輸省の管轄)、オンタリオ州の5港とブリティッシュコロンビア州の4港は、港湾委員会(Harbour Commission ; HC、運輸省の管轄)、その他の地方港524港は運輸省(Transport Canada ; TC)により管理されている。このほか、漁業・レクリエーションのための港湾が約2,000あり、漁業海洋省により管理されている。

 

港湾を国が管理することとされたのは、British North America Act of 1867で海運や船舶航行に関することを国の業務と規定したこと、1868年の法律で、国の機関として海洋漁業局を置き、錨地、桟橋、埠頭、港湾委員会、航行等に関することを担当させたことがはじめである。その後、1930年代の景気後退で地方所管のポートオーソリティが財政難に陥ったため、これを救って港湾の適切な開発・管理・運営を行う必要が高まり、1936年、National Harbours Board (NHB)が設立された。このNHBによる管理運営は47年間続いたが、NHBでは地方の実体に即した機動的な運営ができないことが問題となり、1982年、カナダ港湾公社法(Canada Ports Corporation Act)が制定され、NHBは解散された。カナダ港湾公社(CPC)は、より独立性の高い組織で、NHBに代わって主要14港を管理・運営を行うこととなったが、中央による港湾管理という形態が変化したものではなかった。

 

カナダ港湾公社(CPC)の管理する14港のうち7大港15は、自治権の強い地方港湾公社(Local Port Corporation)であり、CPCを通じて国から予算等の承認を受ける必要はあるが、各港湾は独自の経営をしている。この7大港については、国の機関による管理に区分されるが、独自のボードも設置されており、実質的には独自運営に近いものである。CPCの他の7港は、規模も大きくなくCPCが一括して管理を行っている。

 

カナダにおいては、約60年間、国の機関の関与の強い港湾の管理が続いてきたが、1996年カナダ海事法(Canada Marine Act)が議会に提案され、国の関与を減らし、地方に管理を移管する方向に向かっている。この法律は、現在議会審査中であるが、これが制定されると、

1) 主要港の管理・運営は、カナダポートオーソリティ16

2) 地方港は、地方行政機関、

3) 特定の遠隔港は国が行うこととなる。この新法が施行されると、国は港湾の管理・運営について、特定の遠隔港を除きほとんど関与しないこととなる。

 

 

15 /Halifax, Montreal, Prince Rupert, Quebec, Saint John, St. John's, Vancouver

16/Canada Ports Authorities

 

 

 

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