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4-2 航路の開発および維持管理

港湾に入出港するための航路、河川筋の航路の開発及び維持管理は、連邦政府の所管である。すでに供用されている航路の水深を維持するための浚渫は、連邦政府(陸軍工兵隊)が自らの費用で実施している。実際の浚渫工事は民間会社あるいはポートオーソリティー(ポートランド港等)が委託を受けて実施している。

 

維持浚渫の多いところは、コロンビア川(ポートランド港等34港が河川筋に散在)、ミシシッピ川(ニューオリンズ港等)などの河川筋に限られており、外海に面する港湾ではあまり大規模な維持浚渫は行われていない。維持浚渫コストは、コロンビア川で年間2,000万ドル程度である。

 

航路の新設・増深の場合は受益者となるポートオーソリティに対し、連邦が補助という形で費用の一部を負担している。負担割合はケースによって異なるが、コンテナ船用の港湾開発では、連邦60-65%、ポートオーソリティ35-40%程度が標準である。航路の新設、増深の計画は、陸軍工兵隊によってフィージビリティスタディが行われ、連邦の承認を得る必要がある。

 

航路の維持管理財源

1986年、Water Resource Development Actが制定され、港湾の維持浚渫の費用に当てるため、米国の港湾に搬出入される貨物に港湾維持管理負担金(Harbor Maintenance Fee, HMF)が課されることとなった。これは、当初、貨物の評価額の0.04%であったが、1991年1月から0.125%に引き上げられ、港湾維持管理信託基金として積み立てられている。

 

このHMFの徴収額は、1990年度、180百万ドルであったものが、引き上げの効果もあり、1995年度は、671百万ドルに増加した。この基金は、航路維持管理に使われるよりも徴収額が多く、1995年末で6億2,100万ドルが積み立てられており、今後、さらに増加することが見込まれている。

 

この負担金に対しては、利用する船の大きさや貨物の重量でなく、貨物の価格に対して付加されるので、不公平であること、必要額よりも過大に集められていることから問題となり、連邦国際貿易裁判所で審査され、1995年10月、輸出に対する課税、賦課金を禁じた合衆国憲法に違反するとの決定がなされた。連邦司法省は、1996年2月、連邦国際貿易裁判所に意見提出を行い、この結論がまだでていないので、港湾維持管理負担金の徴収は続いている。また、輸出貨物に対する賦課金を中止し、輸入貨物の対してのみこれを徴収すると、輸入に対する課税を定めたWTOの取り決めに反することとなる。

 

 

 

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