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定数社(Modern Terminals Limited, Hong Kong International Terminals Limited, Sea Land Orient Terminals等)によって運営されているということである。更に政庁がターミナルの供給が過小気味になるように開発をコントロール(不足分は沖荷役等で調整)して民間企業によるターミナル運営を支えている(あるいは民間企業に利益を保証している)面もある。

第三は、管理能力の低いバルボア、クリストバル港(パナマ)のように、港湾の開発、及び管理・運営権の殆ど全てについてのコンセッションを開発者(民間セクター)に付与してしまう事例がある。

 

5 港湾管理者直営による包括的港湾管理・運営

民営化の流れを公的業務の外部化と捉えればその一方で、公的セクター、民間セクターに関わらず全ての機能を管理者が握ったままで(業務を一切外部化していない)港湾もまだ多い。このタイプは管理者直営方式の港湾として通常、「comprehensive Port」あるいは「設備/まかない付き家主型」として一つのカテゴリーに区分される場合が多いが(ここでは港湾管理者が公的セクターか民間セクターかによって二分して考えることとした。

第一に、「持ち家型管理者」型港湾は、完全に民間セクターによって港湾の管理・運営が行われているケースである。英国の港湾管理・運営形態の中でも会社港(Company Ports)に属するフェリックストオがその代表例である。この場合は民間所有かつ民間運営であるから、“私有化”ということもできる。また(ニュージーランドのタウランガ港の場合には、管理者であるタウランガ港株式会社の株式は今のところ地方自治体がまだ55%(残りは一般所有)を所有しているが、自治体保有分も制度上は売却できるようになっており手続き上は完全に民営化されたといえる。何れの場合の“私有化”も当時の政権による強力な規制緩和政策の推進(1980年代)が背景にある。

第二に、「設備/賄い付き家主型管理者」型港湾は、政府(中央あるいは地方)そのもの、政府の一機関、あるいは政府直営の公社等公的セクターが一貫して管理・運営に関わるタイプである。東南アジア、中国、中近東、中南米地域に幅広くみられる。取り扱い貨物量の比較的大きな港湾(年間100万TEU以上)としては、ドバイ、バンコク等がある。代表的な途上国型港湾といわれているものがこのタイプに含まれよう。このタイプでは管理者に港湾サービスの効率化への意思があっても結果としてインセンティブが働かない場合も多い。例えば、近隣に競合する港湾もなく競争条件が厳しくないことから、結果的に貨物が一港湾に自然に集中してしまい荷役の効率化への要請が高まったとしてもインセンティブが働かない場合である。その理由としては、港に新規投資を行う財政的余裕がない場合、中央政府の開発政策のプライオリティに従って当該港湾の開発が抑制される場合、立地(拡張スペース、水深等)上拡張が物理的に困難な場合、あるいは業務見直しに伴う管理者が抱える過剰労働者の問題等の要因が障壁となって効率化が進まない場合などが多い。チッタゴン港(バングラディシュ)、ムンバイ港(インド)等がそれである。その他、他港との競争条件も厳しくなく、また貨物の集中もみられないような中規模以下の港湾においても当然のことながら効率化へのインセンティブは働きにくい傾向がある。

 

 

 

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