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新会社のうち、レクトリソク・ドライブ社(Eco)は、発電機により作られた直流を有効なトルクに転換するための電気モーターと制御機構を製造している。Eco社は自動車のための電気駆動を提供したいすべての会社に供給している。この会社は共同で運営されているため、主要な目標のひとつは各顧客の厳格な機密保持を行なうための手続きを導入することである。Eco社の株をフォード社が62%、ダイムラー・ベンツ社が17%、バラード社が21%保有している。

 

バラードオートモーティブ社はこれらの会社のマーケティングを手がけている。エレクトリック・ドライブ社の製品やdbb社の燃料電池エンジンあるいはバラード・パワー・システムズ社の自動車用部品を購入したいと思う顧客に対し、同社が1つの窓口として対応している。このアライアンスへのフォード社、ダイムラー・ベンツ社およびバラード社の総投資額は6億カナダ・ドルの現金を含む10億カナダ・ドル以上に達している。

 

アライアンスの焦点は自動車用部品のための燃料電池を商品化することであり、この目標を達成することの意味は世界のOEMとそれらの製品の販売者のニーズを満たすことである。OEMおよび自動車販売業者はバラード社の燃料電池製品、dbb燃料電池エンジン社のエンジンおよびEco社の電気モーターと制御機に対する自由なアクセスを持っている。これらの会社のどの顧客も技術の特定や納品に関して優先的な扱いを受けてはいない。彼らは彼らのニーズに応じてすべての製品ラインから好きなだけ多く、あるいは少なく購入することが可能である。OEMおよび自動車販売業者にとって他の主要なメリットは、既に証明されている技術上のリードをさらに拡大するとみられる、並ぶものがない程の資源の量にアクセスできることである。加えて、この提携は商業ベースのコストを達成するための十分な生産量を確保できる最初のグループとなるであろう。

 

実証

多くの先行する製造業者とバラード社は燃料電池自動車を実証した。多くのさまざまな自動車の概念とマーケットに対し、短期的および長期的の両方における商品化のための最善のルートを確立することが求められている。

 

バスの実証-世界最大の燃料電池自動車の実証計画が現在進行中である。これは米国のシカゴ交通局とカナダのブリティッシュコロンビア交通局によるdbb社の燃料電池エンジンを含む交通バス計画である。3台のバスによる実証用のフリートが二つの交通局に納車された。これらのバスはこの製品の商品化のための情報と経験を集めるために、初期の実証用フリートの部分として運行された。バスはそれぞれの都市で要員の訓練とインフラの開発のために、乗客を乗せずに1500kmの試験走行を行なっている。その後これらは通常のフリートに統合され運行されるであろう。1998年3月16日に料金を払った世界で最初の乗客が、シカゴで燃料電池で動くバスに搭乗した。プレスでの発表では、これらのバスの経験はすばらしいものであった。バンクーバーにおいても、1998年の6月初旬にバスが料金を払う営業運行に入る予定にならている。それぞれのバスは、バスの屋根に付けられたアルミニウム・夕ンク(ファイバーグラスで補強されている)に貯蔵された水素を燃料としている。シカゴのバスは、液体の形で事業所に貯蔵された高圧水素により給油される。バンクーバーのバスも同様に高圧水素を給油するが、水素は事業所において電気分解装置により生産される。これらの自動車は400kmの走行範囲を持ち、60名の乗客を運ぶことができる。

 

 

 

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