アライアンス
自動車用PEM燃料電池の技術を商品化するために、主要な新しい提携(アライアンス)が形成された。バラード社は1983年以降さまざまな部品のためのPEM燃料電池を開発してきた。バラード社は最も進んだ技術、最も広範な人材、設備およびインフラ、独占的な特許の地位および顧客ベースでの独占に近い状況などの理由でこの分野において、世界的に認められたリーダーシップを確立した。バラード社は研究室レベルのモデルが最初にダイムラー・ベンツ社に納品された1989年以来、燃料電池に関してダイムラー・ベンツ社と対話をかさねてきた。1993年にダイムラー社とバラード社は自動車用燃料電池の改良のための共同開発活動に入った。この努力の結果、燃料電池自動車の要求に十分応えることのできる、燃料電池の出力密度の劇的な向上を達成した。加えて、ダイムラー社は後で触れるNECar I、II、IIIおよびNEBusという形で結実した野心的な試作車計画に取り掛った。これらの活動のすべての結果により、ダイムラー社は自動車用燃料電池の将来性に確信を持ち、ダイムラー社がバラード社とジョイント・ベンチャーを形成する結果となった。
フォード社とバラード社は1990年代の初めから自動車用燃料電池に関して議論を続けてきた。フォード社は米国エネルギー省の燃料電池計画に参加し、それらの活動から利用できる開発に関する知識がある。1997年12月にフォード社は燃料電池提携を形成するためダイムラー・ベンツ社およびバラード社と連合した。この提携は乗用車、トラックおよびバスに限定された運輸部品のためのPEM燃料電池の商品化に焦点をあてている。図1のダイムラー・ベンツ/フォード/バラードアライアンス構成図を参照されたい。
バラード・パワー・システムズ社は自動車用を含むさまざまな部品のための燃料電池を開発、製造し続けるであろう。開発のための量の大幅な増加とコスト削減のための生産量の増加を可能にする、さまざまな部品の間の燃料電池に対しては強い相乗効果が働く。自動車用部品に関して、バラード社はすべての自動車メーカー(OEM)あるいは燃料電池システムを構築したいという他の業者に対して燃料電池を供給する。バラード社は多くのさまざまな会社と共同しているため、その各顧客の機密情報を保護するための厳格なプロトコルを持っている。バラード社の株をダイムラー・ベンツ社は20.0%、フォード社は15.1%保有しており、残りは米国の店頭市場(NASDAQ)とトロント証券取引所で取引されている。
この提携の結果、3社の新しい会社が誕生した。dbb燃料電池エンジン社は、バラード社から燃料電池の提供を受け、燃料電池エンジンを製造しているが、この場合の燃料電池エンジンは燃料貯蔵装置から燃料を受取り、整流されていない直流動力を発生させるものと定義されている。これらの燃料電池エンジンは、これらのエンジンを運輸部品として使いたいというすべてのOEM業者に納品されている。dbb社はまたその顧客すべての機密を保持するための厳格な手続きを持っている。dbb燃料電池エンジン社の株をダイムラー・ベンツ社が51%、バラード社が27%、フォード社が22%保有している。