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きりと改善した。エステルは潤滑性の改善剤として作用するように見られた。しかしながら、HFRRテストだけの結果では、燃料の挙動に関して断定的な結論を引き出すことはできない。

 

燃焼特性

燃料の着火特性(セタン価)は低負荷の場合に最も重要である。セタン価が低い場合、着火の遅れが増加し、着火の時期には多くの燃料がシリンダー内にたまる。これはディーゼルの「ノッキング」と表現される、非常に速い燃焼過程につながる。急速な燃焼を伴う着火の遅れは通常、より高いエミッションや騒音につながる。

大型VOLVOエンジンに関し、エタノールおよび低セタン価燃料では、着火の遅れは最も長く、燃焼時間は最短であった。セタン価向上剤の効果は明らかであった。セタン価向上剤が加えられた場合、着火の遅れはより短くなり、燃焼過程はより滑らかになった。

同じことが大型VALMET612エンジンでも観察された。但し、燃焼過程はVOLVOエンジンの場合よりかなり不規則であった。着火の遅れはVALMETエンジンでは概して長く、実際の燃焼過程は急速だった。VALMETエンジンでは、噴射の開始と燃焼の中心点の位置がエタノール燃料により遅らされた。セタン価向上剤を加えた燃料については、着火の遅れが短くなり、最大シリンダー圧力上昇率がより早く発生する、つまり燃焼過程がより滑らかであるということが明らかに見られた。

Audi自動車によるテストでもまた着火の遅れが、他の燃料よりエタノール燃料の場合に長く、エタノール混合燃料は着火の後非常に急速に燃焼し、燃焼時間が短くなるという結果になったことを示していた。セタン価向上剤の効果は大型エンジンでのテストの場合ほどは明らかでなかった。しかしながら、いくつかの燃料、とりわけセタン価向上剤に非常に高い反応を示したエステル混合燃料では、セタン価向上剤を加えない燃料より加えた燃料の方がやや短い着火の遅れとなるようであった。相関関係分析(直線回帰)は炭化水素燃料と代替燃料に関する燃焼特性に、どのパラメータが影響を与えるかを研究するために使用された。相関関係は異なった負荷において、いくらかの変数によっては変化した。低負荷は着火の過程に対して最も重要であるため、そこに主要な注意が払われた。

VOLVO大型エンジンでは、着火の遅れ、最大シリンダー圧力上昇率および熱発生値とセタン価との相関関係は炭化水素燃料と代替燃料の両方にとってかなり強いものであった。VALMET 612DWIエンジンで観察された相関関係はVOLVOエンジンでの結果と非常に類似した。セタン価と燃焼特性の間のいくつかの強い相関関係が炭化水素燃料と代替燃料の両方に見られた。セタン価は炭化水素燃料においてさえ、Audi TDIの燃焼変数と相関関係がなかったが、この原因はAudiの複雑な先進技術によるものと思われた。

これらの結果によれば、伝統的なセタン価測定法は低負荷の状態での大型エンジンについては

 

 

 

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